憲法36条

社会・政治

 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 日本国憲法第36条です。
 絶対に、という文言がある法律はこれだけです。
 
 判例では、死刑はこれに該当せず、合法と見なされ、今日まで多くの殺人犯が処刑されてきました。
 しかし宅間守は確定後約1年で処刑されたのに対し、連合赤軍の永田洋子や坂口弘は、事件から約38年、死刑確定から約17年を経てもなお、処刑されていません。
 永田洋子は脳腫瘍で寝たきりだそうですから、死刑執行は不可能で、事実上、終身刑でしょう。
 共犯の坂東國男が国外逃亡中で裁判が終わっていないから、とする説がありますが、いずれにしろ、司法の決定を行政は恣意的に運用しているとしか思えません。
 行政のさじ加減で刑罰が履行されないのは問題です。
 法務大臣は原則として死刑確定から六カ月以内に死刑執行を命令しなければならない、と刑事訴訟法に規定されています。

 さて、憲法36条に戻ります。
 死刑は残虐な刑罰でしょうか。
 多分時代と場所によって、残虐の定義は異なりましょう。
 現在の日本では、残虐ではないことになっていますが、私は明らかに残虐な刑罰だと思います。
 殺人事件の抑止になるとか遺族感情とかを勘案してもなお、お前を殺す、と宣言していつ殺されるか分からないまま何年も拘置するということが残虐ではない、とは、私にはとても思えません。
 では、現在日本に存在しない終身刑はどうでしょうか。
 恩赦も刑の軽減による釈放も絶対にあり得ない、死ぬまで刑務所に入っていろ、という刑罰。
 死刑制度廃止の代替手段として、終身刑の導入を進める動きがありますね。
 私はこれも、残虐な刑罰なのではないか、と疑問に思います。
 明日への希望が全くない緩慢な安楽死とでもいうべき刑罰。
 もしかしたら死刑以上に残虐かもしれません。

 私は、単純に死刑制度を廃止し、最低十年で釈放される可能性のある現在の無期懲役を最高刑とする刑事罰体系で良いのではないかと思います。
 最低十年といっても、実際には無期懲役をくらって十年で出てくる、というのはあり得ないようですし、結果的に終身刑になることもあり得るわけです。

 死刑の存廃については、廃止論も存置論も、議論は出尽くしている感があります。
 そして日本人の約80%が消極的ながら死刑制度維持に賛成しています。
 こうなるとほとんど好き嫌いの感情論みたいなもので、議論は平行線をたどります。
 ヨーロッパ諸国をはじめとする先進諸国が廃止しているから外交上の配慮でとか、冤罪の可能性とか、国家による殺人だとか、応報刑ではなく目的刑にすべきとか、死刑廃止論者がいつも掲げるややこしいお題目は言いません。
 死刑制度賛成論者がそれに対してどういう反論をするかもよく分かっています。

 私は自国の政府機関が、よってたかって縄を打ち、泣こうが叫ぼうが無理矢理首をくくってしまう制度が理屈抜きにいやなのです。
 そいつがどんなに凶悪な殺人犯でも、国の行政機関が正義面して殺すことがいやなのです。
 もっと静かに、理をもって、反省を促してほしいのです。
 そして本当に更生したのなら釈放すればいいし、そうでなければ死ぬまで閉じ込めておける現行の無期懲役が最高刑でよいと思うのです。
 
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