最近新型うつという病名をよく聞くようになりました。
従来のうつ病とは似て非なるもののようです。
従来のうつ病は中年での発病が多く、生真面目で責任感が強い人に多くみられ、しかも発症を自己の弱さと捉えて自責の念にかられ、職場にいる時はもちろん、休みの日でも、また病気休暇中でも何もやる気が起きず、悶々として時を過ごし、眠っている時以外は憂鬱感や悲哀感から逃れられないのが特徴です。
一方新型うつは発症を社会や職場のせいにして自責の念を感じることがほとんどなく、職場ではうつ症状を呈しますが休みの日は元気で遊びまわっているのが特徴だそうです。
また、従来のうつ病は抗うつ薬がよく効くのに対し、新型うつの患者に投与してもほとんど効かないのだとか。
そうなると、新型うつという名称は不適切であるように感じます。
うつ病の一種ととらえると、飲み会やレクリエーションの場では元気なことから、周囲から詐病の疑いがかけられ、新型うつの患者は不利益を被りますし、まして抗うつ薬が効かないとなると、そもそもうつ病とは違う新たな精神障害と考えるべきでしょう。
また、新型うつにはまだ明確な診断基準が確立されておらず、2週間以上不眠気味だとか、出勤できないと言ったことから、無理やり従来のうつ病の範疇として診断したのでは、治るものも治らないのではないでしょうか。
5年前くらいから20代前半の青年に新型うつに罹患する者が急増し、社会問題化しているようです。
一部にはゆとり教育の弊害ではないかという意見もあるようですが、それは問題を矮小化しているとしか思えません。
なんとなれば、教育プログラムは時代や国、地域などで大きく異なり、それによってその度に新たな精神疾患の患者が多数発生するとは考えにくいからです。
近頃では、会社によっては職場お父さんとか職場お姉さんとかいう奇妙な制度を設け、職場の先輩の中から疑似家族を任命して新人を安心させ、五月病や新型うつの発症を抑えようとしているやに聞き及びます。
新人といえど就職したその瞬間から一人前の社会人。
人をあんまり甘やかしたり馬鹿にするような制度は慎むべきでしょう。
精神障害の場合、あまり理由を考えても仕方ありません。
ストレスの原因が明白で、それを取り除くことが治癒につながる場合もありますが、一度精神に傷を負うと、原因を取り除いても長く苦しみが続くものですから。
今は新型うつの定義と診断基準を明確化するとともに、従来のうつ病と混同しない名称を考えることが求められるでしょう。
![]() | 職場を襲う「新型うつ」 |
NHK取材班 | |
文藝春秋 |