新釈 四谷怪談

文学

 小林恭二の新作評論「新釈 四谷怪談」を読みました。

 「四谷怪談」が「忠臣蔵」の裏の物語であることは、多くの学者によって指摘されていますが、この著書ではそれには多く触れていません。

 「四谷怪談」を、貴から賎へ、聖から俗へ、の逆転の物語と捉えたうえで、さらに、女性解放の先駆けとなった物語と捉えています。

 おもしろい見方です。

 この歌舞伎が初演されてから約40年後に明治維新が起こっています。その後、女性解放は高らかに宣言されることになりますから、それに先駆けて、お岩様という祟り神が武家の男や、その係累を祟るというのは、江戸末期にあっては精一杯の女性解放運動だったかもしれません。

 それにしても、小林恭二は最近、歌舞伎の評論ばかりで、小説を書いてくれません。20年来のファンである私は、小説を待ち望んでいます。

新釈四谷怪談 (集英社新書)
小林 恭二
集英社