春の雪

文学

 先般、南関東の平野部にもうっすらと雪が積もりました。
 雪国と違って、南関東の雪は春の前触れでもあります。
 幸い私は通勤の足に不便はありませんでした。

 春たてば 花とやみらむ 白雪の かゝれる枝に うぐひすのなく

 
「古今和歌集」にみられる素性法師の歌です。
 
 春めいてきて、白雪がかかる枝を、花が咲いていると思い込んで鶯が鳴いているというのでしょう。
 早春らしい、まだ冷たい空気に、太陽の光が暖かく降り注ぐさまが思い浮かびます。

 もう梅が咲き始めているとか。
 これからもの思わしい春の到来ですね。

 春は春愁、秋は愁思といいます。

 春や秋のような、人にとって最も過ごしやすい季節にもの思いに沈んだり、悲しいような焦るような気持ちになるとは不思議なことです。

 私は秋はそうでもありませんが、春はなんとなく気鬱に襲われます。

 長いこと会計事務をやってきて、春は殺人的な忙しさで、桜を見ると条件反射のように気分が沈みます。
 それでも最近数年は、会計事務から離れて、人並みに花見を楽しむ余裕ができました。
 今は体調もよく、精神病薬を服薬していることを除けば、まるっきり普通に過ごしています。
 人生山あり谷あり。
 
 去年の今頃はリワーク・プログラムに参加して、谷底から這い上がろうとあがいていました。
 今になって思い起こすと、病人にはハードと思われるあのプログラムが、再生へのきっかけになったと思われます。
 
 厚生労働省所管の独立行政法人が障害者のために無料で行っている事業です。
 去年事業仕分けの対象になっていましたが、ああいう弱者の社会復帰を支援する事業こそ、公的機関でなければできないこと。
 同じような悩みを抱えるみなさんのためにも、継続してほしいと思います。

古今和歌集 (岩波文庫)
佐伯 梅友
岩波書店


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