春めく

文学

 今日は馬鹿に暖かいですね。
 これで一気に桜が開くでしょう。
 すっかり春めいてきました。

 春立つと 沖辺かすめる 湯の町に ひとり篭りて さびしくも居る

 若山牧水
の和歌です。

 華やかであるべき春に寂しさを感じるというのは、我が国民の独特の感性でしょうか。

 私も定年したら、春を、海辺の湯の町に1人で過ごしたいものです。
 老人になった私がその時感じるのは、勤めあげたという充実感でしょうか。
 それとも、くだらぬ仕事にかまけて人生の大半を過ごしてしまった切なさでしょうか。

 今の私には、わかりません。

 一つ言えるのは、定年後10年は生きたいということです。
 先月父を亡くし、長生きしたいという思いを強くするようになりました。
 長生きして、この世の快楽を舐めつくし、人類の行く末を見届けたい、と。

 その思いは父が私に健康に留意せよ、という無言のプレッシャーを与えているのだと思っています。

 春速く まよひ出でたる 蜂の子の 菜の花のうへを なきめぐるあはれ

 
こちらも若山牧水の和歌です。

 あんまり春早く出てきたので、菜の花をどうして良いかわからないんでしょうか。
 あはれではありますが、生命の力強さも感じます。

 私はむしろ、湯の町に籠るのではなく、菜の花の上を泣き巡るべきなのかもしれません。
 精神の運動とともに、肉体の運動にも挑戦しなければ、人類の行く末を見届けることなどできはしますまい。

若山牧水歌集 (岩波文庫)
伊藤 一彦
岩波書店



若山牧水随筆集 (講談社文芸文庫)
若山 牧水
講談社

にほんブログ村 本ブログ 純文学へ
にほんブログ村


本・書籍 ブログランキングへ

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い