月下独酌

文学

 今宵もウィスキーをやってしまいました。
 医者からは節酒しろと言われているんですがねぇ。

 今生を生きるのに、素面で毎日を過ごすことなど、私には正気の沙汰とは思えません。
 一応、勤務時間中は素面で我慢していますが、私の精神は常に酔いを求めているかのごとくです。

 私は真面目なサラリーマンですが、できればジャンキーのように、始終酒や麻薬に酔っていたいたいという欲求を捨てることができません。

    花間 一壷の酒
    独酌 相親しむ無し
    杯を挙げて 明月を邀むかえ
    影に対して 三人を成す
    月既に 飲を解せず 
    影徒に 我が身に随う
    暫く月と影を伴うて
    行楽 須すべからく春に及ぶべし
    我歌えば 月 徘徊し
    我舞えば 影 零乱
    醒時 同じく交歓し
    酔後 各 分散す
    永く無情の遊を結び
    相期して 雲漢はるかなり

 李白
「月下独酌」です。

 薬のない時代においては、ただ酒だけが、意識の変容をもたらしてくれる、強烈なドラッグだったのでしょうねぇ。

 私もまた、わが国における唯一の合法ドラッグである、酒をやめることができません。

 精神障害者であるがゆえ、私は様々な差別に遭遇してきました。
 さすがに職場復帰して4年目を迎え、ようやっと認められるようになってはきましたが、今なお、障害者に対する差別は根強いものがあります。

 だからこそ、私は仕事から帰って後のわずかな時間を、意識の変容を求めてしまうのです。

 あぁ、心の底から安心して、気楽に生きる生活が欲しいものです。

 もう20年以上、例え休みの日であっても、くだらぬ仕事のことが喉元に刺さった棘のように、私を苦しめます。

 20年以上、心が休まる日は一日とてありませんでした。

 それが生きるということなのかもしれません。

 しかし私は、この世に生を受けた以上、下らぬお役目などからは解放されて、おのれ独りの精神に目を向けて、日々を暮らしたいという、暗い欲求を捨てきれない愚か者なのです。

李白 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
谷口 広樹
角川書店

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