柩の中の猫

文学

 今日は病気休暇を取りました。
 背中の脂肪腫の手術で縫った糸を抜くためです。

 午前10時には抜糸は終り、小説を読みました。

 御大、小池真理子先生が作風を変えようと書いた、と自らおっしゃる「柩の中の猫」を読みました。

柩の中の猫 (集英社文庫)
小池 真理子
集英社

 不思議な読後感の作品です。

 1955年、絵を学ぶために大学の美術教師の家に小学生の娘の家庭教師という名目で同居することになった20歳の雅代。

 美術教師の妻は亡くなっており、3人の生活が始まります。
 明るく、社交的でパーティー好きの美術教師。

 ララという真っ白な猫を溺愛する小学生の娘。

 順調に見えた生活が、美術教師の婚約者の出現によって暗転し、物語は加速度をつけて展開します。

 広い意味ではサスペンス仕立ての小説ですが、この作家は何よりも心理描写が見事です。

 雅代や小学生の娘の心理が卓越した筆で描かれます。

 よく人が死ぬのはご愛嬌。

 一匹の白い猫をめぐる愛憎劇が、これほど優れた心理劇を生むとは、さすがに御大です。


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