梅雨明け

文学

 今年は早くも梅雨があけて、暴力的なまでに強烈な陽射しが降り注いでいます。
 昨日ははるばる日本橋の三井記念美術館まで足を運びましたが、今日は冷房を効かせたマンションから出ることができません。
 まことに狂気じみた暑熱で、我が家に節電という言葉は存在しえません。
 この必ず訪れる過酷な暑さを、古人はどう過ごしていたのでしょうね。

 入道の 裸うとまし 竹婦人   
内藤鳴雪

 入道はもともと坊主になって修行する人のことですが、この句ではむさくるしい大男と思えばよいかと思います。
 竹婦人とは竹で編んだ抱き枕で、涼をとるための物です。
 大男の裸が鬱陶しい、と竹婦人が思うほどの、うだるような熱帯夜を、洒落た句で表現していますね。
 なるほど古人は、こんな風に熱帯夜を過ごしたのでしょうね。

 ゆるやかに 着てひととあふ 蛍の夜   
桂信子

 こちらはぐっと意味深な句ですね。
 浴衣をゆるやかに着て蛍の夜にひとと会うというのです。
 夏の夜のデートでしょうか。
 暑いのがかえって肉感的な興趣を高めています。
 こんな過ごし方なら、蒸し暑い夜も、心騒ぐものとなりましょう。  

 しかしすだれをかけても風鈴を鳴らしても打ち水をしても暑いものは暑い。
 結局私は文明の利器を借りて、強引に涼風を求め、家庭内避暑地を築き上げるしか、真夏の休日を過ごす術を知りません。

鳴雪自叙伝 (岩波文庫)
内藤 鳴雪
岩波書店
桂信子全句集
宇多 喜代子
ふらんす堂

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