体調が良くなって、吉田修一の「橋を渡る」を一気に読みました。
不思議な小説です。
![]() | 橋を渡る |
吉田 修一 | |
文藝春秋 |
「春ー明良」、「夏ー篤子」、「秋ー謙一郎」と、それぞれ異なる主人公の物語が綴られます。
そして最終章でそれぞれが繋がる、というパターンの群像劇で、この作者の作品としては珍しくない構成です。
しかし、「そして、冬」、「エピローグ」にいたって、びっくり仰天。
それぞれの物語の主人公が繋がることはたしかなのですが、その舞台が70年後の近未来という設定です。
うーんと、うなりました。
面白いといえば面白いですが、描かれる70年後があまりに突飛で、面食らいます。
「秋ー謙一郎」で登場した学者が研究中の、IPS細胞から精子と卵子を作り出し、それを合わせて人間の生み出すという技術が開発され、それによって生み出された人間はサインと呼ばれ、明らかに差別されています。
また、70年後には100歳くらい当たり前ですが、サインは40歳くらいまでしか生きられません。
正直、どの人物にも感情移入できませんでした。
吉田修一という作家、どうもむらっけがあるようです。