永世中立国といえば、まずはスイスを思い浮かべます。
そのほかに、オーストリアとトルクメニスタンが国連で承認された永世中立国です。
オーストリアの場合は、欧州連合に加盟してしまったので、事実上、永世中立国であることを止めたと言っていいでしょう。
他に永世中立国を宣言している国がいくつかありますが、承認されていないそうです。
私の職場に、スイスから漆器の研究に来ているF氏がいます。
時々喫煙所で一緒になって、話をします。
F氏が語りたがるのは、専門の漆のことではなく、軍隊経験です。
永世中立を国是とする以上、他国と軍事同盟は結べず、軍事的危機に際しては、自国のみで対処しなければならず、当然の帰結として徴兵制がしかれ、国民は等しく軍役に就くのです。
身の丈に合わない強大な軍隊を保持し続けている道理です。
F氏が駐屯した場所は、とても古い施設で、シャワーはあるけどお湯が出なかったそうです。
まるで瀧に打たれる行者のように、真冬は震え、大声を上げながらシャワーを浴びたとか。
上官の言うことは絶対で、おかしげな命令だからと言って抗議したり、ご意見したりするのは許されないそうです。
戦場において、生きるか死ぬかという極限状況では議論している暇などなく、組織だって動くにはおかしいと思っても上官の命令に従わなければならないのでしょうね。
軍隊というのはいずこも理不尽がまかり通るようです。
幸いにしてわが国は徴兵制を採っておらず、私は銃を撃つ訓練をすることなく、一生を終えることができそうです。
仮に北朝鮮や中国の脅威が高まり、徴兵制が復活したところで、もうすぐ42歳になろうという私に召集令状はこないでしょう。
F氏は、軍隊の理不尽を並べ立てながら、軍隊に行って良かった、とも言います。
若いうちに厳しい訓練を受け、過酷な環境で暮らすことで、平和な一般社会の有難味がわかり、これを守るためには侵略者に銃を向けることに躊躇は覚えない、とか。
わが国で徴兵制をしく必要はないでしょうが、以前このブログに書いたように、役務の提供を目的とする強制的な徴発を国民の義務としてもよいのではないでしょうか。
そこで体を鍛え、消防や防災などの活動に当たることは、わが国の若者に一本筋を通すことになろうかと思います。
私のようなキャンプやアウトドアが大嫌いな中年おやじになる前に、自然と親しみ、額に汗して広く公共の福祉に貢献することは、教育的観点からも有益でしょう。
もちろん、今さら40過ぎのおっさんを引っ張り出すような愚は犯してはいけませんが。
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松村 劭 | |
祥伝社 |