宮沢賢治の童話は、子どもの頃誰でも一度は読んだことがあるのではないでしょうか。
私はあまり好みませんでしたが。
宮沢賢治は発表した後の作品でも、何度もしつこく加筆訂正を加え、後に全集を編む時、担当者は非常に苦労したそうです。
そのことから、彼は物語に終わりはない、という特異な見方をしていたのではないかと言われています。
発表された物語もすべて未完で、どういう変容を遂げるか誰にもわからないというのは、なんとも思わせぶりで、読者は困っちゃいますね。
よくひどい出来事が有った時、米国映画などで「それでも人生は続く」と諭されるシーンがありますね。
自分が死なないかぎり、両手両足を切断して達磨さんみたいになっても、人生は続くんですよねぇ。
寺島しのぶの「キャタピラー」なんて、まさしくそれでした。
しかし発表した物語というのは、言わば作者にとってはもう死んだものなのですよねぇ。
完成、といって出版社に送ったのなら、それはもう公のもの、作者が勝手にいじってよいはずがありません。
砂浜に自分が作った砂粒を落とす、というのが、物語を作るときの実感ですかねぇ。
多分宮沢賢治は、あまたの砂粒にまぎれ、どれがどれやら分からなくなってしまうことに、恐怖を感じていたのではないでしょうか。
だから投げた後の砂粒を何度も拾っては、修正を繰り返し、そうすることによって物語はいつまでも生き続ける、と信じたのではないでしょうか。
強欲な人ですね。
ベジタリアンとかコスモポリタンとかヒューマニストとか、法華経の熱心な信者とか、彼を崇拝する者は色々なことを言いたてます。
しかし私には、強欲な小金持ちのせがれ、というイメージが抜けません。
得てして理想を追う人というのは金持ちから生まれて金持ちを嫌悪し、極端な思想に走る傾向があります。
宮沢賢治の善行は、生涯独身を通し、その遺伝子を残さなかったことと言ったら、故人に過酷すぎるでしょうか。
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