永久機械

文学

 今朝は変に冷え込みましたねぇ。
 道行く人も、多くがコートやダウンを着こんでいました。
 季節は確実に冬に向かっているようです。

 地球温暖化が嘘のように、今年の冬は寒いとの長期予報も出ています。
 北海道や東北では早くも積雪が始まっています。

 若い頃は、冬のピリピリした感じの空気が好きでしたが、いつの間にやら大の苦手になってしまいました。

 数日前から、股引きを履いています。
 いざという時格好悪いですが、私にはもう、いざという時なんて無いだろうと思っています。

 わだの原 生れてやがて消えてゆく 浪のあをきに 秋かぜぞ吹く

 相むかひ 世に消えがたき かなしみの 秋のゆふべの 海とわれとあり

 ゆふぐれの 沖には風の 行くあらむ 屍のごとく 松にもたるる

 いずれも若山牧水の歌集「独り歌へる」見られる晩秋の和歌です。

若山牧水歌集 (岩波文庫)
伊藤 一彦
岩波書店

 いずれも寂しい感じ、メランコリックな感じが出ていて、惹きこまれます。

 この人、酒を歌うと急に意地汚くなってしまう悪癖がありますが、季節や景色に仮託しておのれの孤独な心情を歌わせると右に出る者がいません。

 石川啄木ほど嫌らしい感じが無く、きれいな歌風です。

 生まれてやがて消えていくのは、浪に限ったことではありません。
 この世のありとあらゆる物が生まれて消えるわけです。

 しかし、骨は残りますし、肉も、あるいは土に帰り、あるいは煙となって、形を変えて残っていきます。

 この巡り巡る永久機械のようなこの世の在り様を思う時、私はただ、病を得ようが不幸になろうが、流れのままに生きていくしかなく、臨終にあたってはお迎えを追い返すようなことがないようにしたいものだと、感慨を新たにするのです。

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