うつ病は誰もが罹患する可能性があり、適切な治療によって治る病気だとされています。
心の風邪、とも。
しかし風邪のように一週間かそこらで治るものではありません。
服薬と休養で、短くても三カ月程度は治療が必要です。
そういう意味では、風邪というより複雑骨折と言うほうが近いでしょう。
また、治るというのも、風邪のようにきれいに治るわけでも、発病前の状態に戻るわけでもありません。
再発が極めて多いことから、再発しないように日頃から用心し、再発予防のために服薬を続け、ストレスを避け、傷ついてしまった精神を労わりながら、だましだましやっていくことに慣れた状態を治ったと呼んでいるだけです。
私のように、当初うつ病と診断されながら、後に躁状態が現れ、躁うつ病(双極性障害)に診断が変る人も少なくありません。
躁うつ病となると、統合失調症と並んで精神障害の二大疾病の一つで、これは治るということはありません。
症状が現れない期間を長くする(できれば死ぬまで)他ありません。
気分安定剤の服薬によって躁状態が現れないようにすることが最も重要になります。
うつ状態は気分が沈んで大人しくなりますから、本人は辛いですが周りに迷惑をかけることはあまりありません。
ところが躁状態になると自分が万能の神様になったような気分になり、多弁になったり、攻撃的になったりして、時には実際に暴力事件を起こしてしまうこともあります。
気が大きくなるから当然金遣いも荒くなり、北杜夫のような有名作家で金持ちのはずの人が、株に手を出して自己破産した例もあります。
私も躁状態の時は、睡眠薬を飲んでも全く眠くならず、一睡もせずにパソコンに向かって駄文を書き散らかし、天下の名作だと思いこんだり、馬鹿な物に浪費したりしました。
今思えば怖ろしい状態ですが、その時はクスリでもやったようなハイな状態で、最高に気分が良いのです。
病気というのはなんでもそうでしょうが、古傷が痛むというように、後遺症が残るものです。
それは治る病気と言われるうつ病も同じこと。
ぬか漬けのきゅうりが生の状態に戻ることはないのと同じことです。
そう思って、半ば諦めがつくまで、発病から8年を要しました。
人によって消化器系の病気を持っていたり、腎臓が悪かったり、心臓に疾患を抱えていたりします。
全くの健康体というのは一種の天才なのだろうと思います。
私はたまたま精神疾患だっただけのこと。
むしろ現代社会は精神疾患に対する表立った差別は無くなり、良い薬が次々と生まれる良い時代です。
この時代の精神障害者で良かったと、感謝しています。