涼しい

文学

 今朝の出勤時、ずいぶん涼しくなったと感じました。
 それでも日中はまだまだ暑いんですけどね。
 昼間は冷房の効いた事務室にいるので、外に出るのは朝と夕方だけ。
 涼しい時間帯しか外に出ないせいか、季節が一気に進んだような気がします。

 春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり

 道元禅師の和歌です。
 季節をすべてわずか1首の歌に詠み込んだ、ちょっと変った歌ですが、私がとくに奇妙だとも、味わい深いとも思うのは、冬雪さえてすずしかりけりの部分です。
 
 一般に雪が降るような時期は、寒いと表現するものだと思いますが、道元禅師はなぜか、すずしかりけり、と詠み、雪が好ましいもののように感じさせます。

 これは実際に涼しいというより、冬の凛とした寒気の心地よさを表現しようとしたものだと思われます。
 
 私は寒い気候が嫌いではありません。
 清潔感や、身が引き締まるような感じが好ましく思えるからです。
 もちろん、私が東京と千葉にしか居住した経験が無いことが大きく影響しているものと思われます。
 首都圏の寒さはたかが知れています。
 雪だってひと冬に一回か二回しか降りませんし。

 それに比べて、首都圏、特に渋谷や新宿などの繁華街の夏は狂気染みた暑さです。
 上からの太陽、下からの照り返し、人ごみ、大きなビルには必ず設置されている巨大な室外機が吐き出す温風。
 それらが混然一体となって、都会特有の我慢ならない暑さを醸しだします。
 
 わが国の古い建築物は、概ねいかに暑い夏を快適に過ごせるか、という観点から建てられていますね。
 それ一つを見ても、日本の夏の過酷さが分かろうというものです。

 でもようやっと、夏は終わりを迎えているようです。
 これから過ごしやすい秋。
 秋は散歩に読書に、色々と楽しみたいですねぇ。

道元禅師語録 (講談社学術文庫)
鏡島 元隆
講談社


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