演歌

文学

 日本の歌謡史に演歌なるジャンルが確立したのはいつ頃なんでしょうね。
 
 私が子どもの頃には、すでに森進一や五木ひろしや矢代亜紀や都はるみといった人々が人気を博していました。
 その他に、ムード歌謡というジャンルも人気がありましたね。
 子どもの私にはその良さが分かりませんでした。
 ついでに言うと、中年になった今もわかりません。
 あまりにも情が強くて、すんなり耳に入ってこないのです。
 
  明治初期の自由民権運動家が演説をする際にわかりやすく歌にして謡った、演説歌が最初だったと聞いたことがあります。
 「オッペケペー節」がその代表格だとか。
 その後政治風刺をからめながら庶民の哀歓を歌う演歌師なるものが現れ、さらにレコードの登場によって爆発的に演歌が広まっていったものと思われます。

 演歌を指して日本の心だという言説を耳にすることがあります。
 
 私はこれには非常な違和感を覚えます。
 なぜなら演歌の歌詞というのが、花鳥風月をからめて恋や心情を遠回しに詠う、和歌や連歌などの伝統的な日本の歌謡とあまりにも異なっているからです。
 むしろ民謡や童謡に日本の心を感じます。
 
 演歌はむしろ、歌詞がストレートであることや、貧乏たらしい感じが、ジャズに似ているような気がします。
 Jソウルとでも名付けたほうが実態に合っているのではないでしょうか。
 
 多分演歌というジャンルは、かつてのフォークやニューミュージックと同様、絶滅していくものと想像します。
 ただ、演歌的テイストを持った歌は残るでしょうが、それはきっと広い意味でのJ・POPに包含されていくんだろうと思います。
 ジャンルを細かく分けない、日本の流行歌という大きなくくりで歌い継がれていけばよいでしょう。

 五木ひろしなどは、小室哲哉が流行らせた曲など、演歌歌手が通常歌わなかった歌を歌い、見事に演歌になっています。
 私は「DEPARTURES」を聞きましたが、多分スキー場を歌っているのであろう雪景色が、五木ひろしが歌うと雪国生まれの人の望郷の歌に聞こえて不思議でした。

 演歌は溶けて、POPも溶けて、ジャンル不要の日本の大衆流行歌が生まれるとよいですね。
 そこには奥ゆかしい見立てや、花鳥風月も散りばめてほしいものです。

甦るオッペケペー
EMIミュージック・ジャパン
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