火垂るの墓

文学

 テレビをつければ震災から一年の特集番組ばかり。
 気が滅入ります。
 まぁ、見なきゃいいんでしょうけど。

 昭和20年3月10日の東京大空襲は過去へと忘れ去られたようですね。
 それでいいのです。
 いつまでも過去にこだわっていては、人間生きていけませんから。

 東京大空襲が主舞台ではありませんが、戦地ではなく、内地での悲劇を描いた作品として、「火垂るの墓」を想わずにはいられません。

 神戸の空襲で寄る辺を失った14歳の少年と4歳の妹の哀れな最期を描いた作品で、野坂昭如独特の饒舌な文体が涙を誘います。
 戦後7日目にして妹は衰弱死。
 荼毘に付した後、兄はドロップ缶に妹の遺骨をいれて持ち歩きます。
 しかし、駅のホームで寝泊まりする戦災孤児となった少年も衰弱死。
 遺体を片付けようと駅員が少年のドロップ缶を放り投げると、それは草むらに落ち、無数の蛍がドロップ缶に群がったというのです。

 切ないですねぇ。
 国家が総力を挙げて戦っているとき、個人の幸不幸はどうでも良くなってしまうようです。
 
 まして天変地異であればなおさら、1人1人の事情など関係なく、地震や津波は人を襲うでしょう。

 スピッツのボーカルが、東日本大震災の後、被災したわけでもないのに立ち直れないほど落ち込んでしまったとか、90歳を迎えるドナルド・キーン博士が、日本を信じていることを身を以て示そうと、このたび日本国籍を取得したとか、直接被災していない多くの者も影響を受けました。

 人間には自分に直接関係の無い人の不幸にも感応する優しい心があるのですねぇ。

 もっとも、人の不幸は蜜の味とも言いますが。

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)
野坂 昭如
新潮社


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