無期懲役

社会・政治

 リンゼイさんを殺害した市橋容疑者に一審は無期懲役を言い渡しましたね。
 予想どおりです。
 被害者が一人で計画性がない場合は極刑にはならない、というのが判例です。
 被害者のご両親は悔しいでしょうが、妥当な判決だと思います。
 求刑も無期懲役でしたし。

 一方、2008年に起きた江東マンション神隠し事件の犯人、星島の無期懲役は不思議でした。

 性奴隷がほしい、という身勝手な理由で面識のない同じマンションに住む20代の女性をさらい、暴れたため、事件の発覚を恐れて殺害。
 遺体をばらばらにしてトイレで流したり、少しづつ可燃ゴミにまぜて出したりして、完全に遺体を処理してしまいました。
 この間、星島は任意の取り調べに一貫して否認。
 それどころか、ワイドショーのインタビューに応じて「なんか僕、疑われてるみたいなんですよねぇ」なんて、へらへら笑っていたのですよ。
 トイレにわずかに残った肉片からDNAを採取し、DNA鑑定で被害女性のものと一致して逮捕にいたったそうです。

 この事件では一審から検察は極刑を求刑しましたが、結果は無期懲役。
 これを不服として検察は控訴、しかし無期懲役は覆りませんでした。
 検察は上告を断念、星島も上告しなかったため、無期懲役が確定しました。

 わが国の最高刑は言わずと知れた死刑です。

 死刑は憲法が禁じる残虐な刑罰である疑いが濃厚で、また、犯罪抑止力があるかどうか科学的に立証されておらず、世界の主要国は死刑を廃止している国が多く、死刑を残置しておくと外交上不利になる、冤罪の可能性が否定できない、などが死刑廃止論者の主たる主張です。

 それに対して、死刑残置論者もそれぞれ説得力のある意見を持っており、ほとんど神学論争の様相を呈しています。

 また、死刑廃止論者の中には、終身刑を設けた上で死刑を廃止しようという意見も有力です。

 しかし私は、死刑を残置することにも、終身刑を設けることにも反対です。

 これは合理的な理由があってのことではなく、言わば情念の世界での反対です。
 平たく言えば、日本国家に法の名の下で人を殺害して欲しくないし、また、社会的な抹殺とも言うべき終身刑を設けて欲しくもないのです。
 なんだか知らないけど、そういうのは嫌なのです。

 凶悪犯といえども、人間。
 生きている人間を泣こうが喚こうが引きずりだして首に縄をかけて縊れ死にさせたり、ただ死んでないだけの人生を死ぬまで送らせるのでは、あんまり残虐で、私は死刑も終身刑も憲法が禁じる残虐な刑罰だと考えます。
 外国でみられるように、懲役200年とかにして、模範囚であれば減刑することにし、わずかでも希望を持たせることが、囚人の更生に資するものと思います。

 遺族の応報感情への配慮は著しく低下しますが、そもそも刑法は、被害者の感情も加害者の感情も考慮しておらず、厳密な法理論であることに思いをいたすべきでしょう。
 囚人の更生に重きを置くことは、現代社会が長い年月を経て得た果実であると言えましょう。

憲法36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 法律は常識を半歩下がって付いていく、と言いますが、憲法36条は憲法9条とは異なり、わが国ひとりの意志で実現可能なので、一歩か二歩、先に行ってもよいのではないでしょうか。

死刑廃止論
亀井 静香
花伝社
死刑廃止論
団藤 重光
有斐閣
死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張 (新潮新書)
美達 大和
新潮社

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