無理

文学

 奥田英朗の長編「無理」を読み終わりました。

 この作者お得意の、いくつかのストーリーが同時並行的に描かれ、ラストに到ってそれらが結びつく、というお話です。

無理〈上〉 (文春文庫)
奥田 英朗
文藝春秋

 

無理〈下〉 (文春文庫)
奥田 英朗
文藝春秋

 町村合併によってできた地方都市、ゆめの市。
 田舎町の退屈さにうんざりしながらも、そこでしか生きられない5人が描かれます。

 東京の大学に進学し、田舎町からの脱出を夢見る女子高生。
 田舎町のしがらみのなかで生きる市議会議員。
 元暴走族で、今は詐欺まがいの訪問販売を生業とする青年。
 新興宗教にはまる、スーパー保安員の中年女。
 県庁から市役所に出向になり、勤務時間中に外回りと称して人妻専門の風俗にはまる公務員。

 これらの人々が、様々な無理目な事情を抱え、奮闘しつつ堕ちていく物語になっています。
 
 読ませる力は十分にあるのですが、この作者にしては人物の作りこみや物語の魅力に、やや物足りなさを感じます。

 それは東北の架空の田舎町を舞台にしているからだけではないでしょう。

 もっとどうしようもなく堕ちていく群像劇に仕立てることができれば、一皮むけた作品になっただろうにと、残念に感じました。


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