焦土作戦

その他

 1945年5月8日、ドイツは連合軍に敗れました。
 しかしすでに多くのドイツ領土が連合軍の占領下にあったため、わが国におけるような明確な区切りとは、多くのドイツ国民はとらえていなかったようです。

 それに先立つこと約一ヶ月半、1945年の3月19日、ヒトラーは恐るべき命令を下します。
 すでに西方戦線も東方戦線もドイツ国内にまで侵入され、敗戦が近いと悟ったヒトラーは、国内のインフラ、工場などをすべて破壊するよう命令を発出したのです。

 後に暴君ネロから、ネロ指令と呼ばれるようになったこの命令、忠実に履行されることはありませんでした。

 ドイツの有能な国民はことごとく死に絶え、敗戦後のドイツを支配するのは強力な東方国家、ソビエト連邦であると考えたヒトラーは、第一次大戦でも第二次大戦でも大敗を喫したドイツ国家は生き残る資格はなく、いっそ全土を焦土と化して占領後の連合国を苦しめようと考えた模様です。
 国家そのものが滅亡すると考えたのでしょうね。

 しかし、戦後処理や戦後の復興を考えた軍需相のシュペーアは意図的にこの命令を実行せず、一種のサボタージュを決め込んで、わずかに残されたドイツのインフラや工場を残したそうです。

 もはや狂気に駆られたとしか思えない異常な命令ですね。

 4月29日、総統官邸地下壕でヒトラーは、「今度こそ我々は、真夜中過ぎまで諦めない」と唱え続けていたところ、腹心の部下であるSS長官のヒムラーが密かに連合軍に降伏するための交渉を始めたと知り、「ドイツ国民は国家社会主義(ナチズム)に値しない」と考え、遺書を書きました。

 その後、独身を貫いていたヒトラーは愛人のエヴァ・ブラウンと結婚。

 砲弾が飛び交い、銃声が鳴りやまないなか、地下壕に残った幹部らとささやかなパーティーを開いた後、副官やタイピスト、運転手らに、イギリス軍占領地に逃げるよう指示を出し、新妻とともに自殺します。

 ヒトラーからプロポーズされたエヴァ・ブラウンは、数時間後には自殺すると知りながら、友人あてに「幸せすぎて死にそう」というブラック・ユーモアのような手紙をしたためたと言います。

 その女心を思う時、哀切の情を禁じ得ません。

 総統官邸地下壕に残っていたゲッペルス宣伝相も妻子とともに自殺。

 ヒムラーは変装して逃げ回っていましたが、連合軍につかまり、奥歯に仕込んでいた青酸カリを噛んで自殺。

 ニュールンベルク裁判では、国家元帥のゲーリングは裁判を最後の戦いととらえ、国家社会主義の理想を雄弁に語り、死刑判決がでてもせせら笑い、処刑の直前、奥歯に仕込んだ青酸カリを噛んで自殺し、裁判関係者の鼻をあかしました。

 ナチズムが吹き荒れたドイツ、多分オウム真理教が政権の座に就いたと想像すると、分かりやすいのではないでしょうか。

 滑稽ともいうべきゲルマン神話や魔術への志向、深夜かがり火を焚いての党大会、黒づくめの制服に帽子には髑髏のマーク、これほど漫画チックで、それでいて魅力的な集団を他に知りません。

 未だにナチの残党が南米だか南極だかで第四帝国の準備をしているとか、UFOを飛ばしているのはナチの残党だとか言う噂が絶えません。

 やったことの是非はともかく、興味をそそられる現象であることは間違いありません。


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