熱燗や

文学

 12月に入ったというのに、今日は暖かい雨が降り続いています。
 異常気象というのではないのでしょうが、なんだか調子が狂います。
 まぁ、寒いよりはよほどマシですが。

 近頃晩は熱燗で暖を取っていますが、今日は冷でもいいようです。

 熱燗や とかくに胸の わだかまり

 久保田万太郎の句です。

久保田万太郎の俳句
成瀬 桜桃子
ふらんす堂

 

俳句の天才―久保田万太郎
小島 政二郎
彌生書房

 胸にわだかまりを持ちながら熱燗を頂くといえば、それは私の日常とも言うべきですが、そのわだかまりがいかほどのものかは、日によってずいぶん異なります。

 幸いにして、このところの私は精神も安定し、さほど強いわだかまりをもって熱燗に助けを求めることもなくなりました。

 精神安定のために飲む酒は、その時は一時的にまぎれても、翌朝かえって落ちているということはよくあります。

 それに比べて単に一日の仕事の疲れを癒す燗酒は、すぐに体中を駆け巡り、じきにねむくなってしまいます。
 わずかの酒で酔えるのは、健康な精神を維持せしめている証拠かもしれませんねぇ。

 緊張に満ちた精神状態では、いくら飲んでも頭の芯が冴えているような感じで、酔えませんから。

 いくら暖かい雨とはいえ、そこは師走。
 今宵もわずかばかりの熱燗を、健康的に楽しみたいと思っています。

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