昨夜はわずか3時間の残業で疲労困憊してしまい、帰るなり風呂にも入らず、晩飯も食わずに寝てしまいました。
おかげで今朝は5時にぱっちりと目を覚まし、絶好調でした。
ここ数日、忙しい日が続き、気が付いたら三日連続で晩酌をやりませんでした。
あんまり疲れると酒を飲む気が失せるのですよねぇ。
今日は日中、絶好調で仕事をこなし、はかどりました。
おかげで今日は定時で帰り、ひとっ風呂浴びて三日ぶりの晩酌を楽しんでいます。
飲まない夜には爽やかな喜びが、一杯やる夜には強烈なアルコールによる快感と背徳の喜びがあります。
どちらもそれぞれに気分が良いものですが、朝のことを考えると飲まないほうがよろしいようです。
そうと知っていて性懲りもなくまた一杯やっている私は、よほどの愚か者と見えます。
わが国の料理は、懐石など、酒飲み用にできていて、下戸が酒席に出るのはさぞかし辛かろうと思います。
そういう意味では、私のような酒飲みにとっては、へヴィな料理が出ず、全体の量も少ない懐石はありがたいものです。
古来、わが国では、花や月、雪などを、季節感を込めて詩歌に詠んできましたね。
そしてそれ以上に、酒を詠んだ和歌や俳句は枚挙にいとまがありません。
松尾芭蕉などは、求道者のイメージが強く、酒の句とは無縁のような印象を持たれがちですが、じつは結構酒に関する句を詠んでいます。
思いつくまま挙げてみるとしますか。
椹や花 なき蝶の 世捨酒
これは単純な酒賛歌とは正反対のものですねぇ。
蝶が花が無くなったサワラで蜜を吸っているのは、世を捨てる=仏門に入るというわけで、世捨て酒とは、世俗の生活を離れようという覚悟を示しているというわけで、酒を詠んでさえその求道的精神が現れてしまうあたり、芭蕉の面目躍如といったところでしょうか。
鑑賞する者を挑発するような趣があって、ちょっと鼻につきますねぇ。
酒のめば いとど寝られぬ 夜の雪
雪の夜、独り雪見酒としゃれ込んでみたものの、どこか寂しくて眠れないというわけで、世を捨てたと格好をつけてみたものの、なんとなく人恋しいという、直接的な心境を詠んでいます。
芭蕉も人の子であったかと、ちょっと安心。
月花も なくて酒のむ 独り哉
これは巧いですねぇ。
月と花と言えば、日本人の美意識の源泉。
花見も月見も酒が付き物。
その花も月も無いのに独り酒を飲む、その寂しさ侘しさが、痛いほど胸に突き刺さります。
今、一杯やりながらこの記事を書いている私の心境そのものですねぇ。
芭蕉、Good Job!
一般に、俳人は歌人と比較してあまり酒を詠みません。
私が最も敬愛する郷愁の俳人、与謝蕪村もこれといって酒を詠んだ句に見るべきものはありません。
だからこそ、芭蕉が残した酒の句は貴重だと言えるでしょう。
気の合う飲み仲間と飲む酒は楽しいものですが、私は何より、独り静かに飲む酒を好みます。
きっと私はわずかな気晴らしのための独り酒が原因で命を落とすのでしょうねぇ。
酒飲みに生まれた者の宿命というべきで、それで命を縮めても構わないと思ってしまう、誠に愚かな酒飲みの私なのです。
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