アントニオ猪木が今夏の参議院選挙に維新の会から出馬すると発表しました。
70歳を迎えた元プロレスラーは、今も元気注入などといって他人の顔を張り、張られた人は元気をもらった、なんて喜んでいますね。
このたびは、80歳の暴走老人、石原慎太郎の誘いに乗ったもののようですが、元々アントニオ猪木は参議院議員を務めていました。
たしか平成元年から5~6年間くらいでしたでしょうか、江本孟紀と二人だけの国会議員を擁するスポーツ平和党という党の党首として。
正直、政界ではキワモノ扱いだったようですが、どういうつてを頼ったのか、独自に北朝鮮とのパイプを築き、訪朝したりなんかしていましたね。
私が少年時代はこの人のプロレスラーとしての円熟期でした。
マサ齋藤やハルク・ホーガン、もとは弟子だった長州力や藤波辰巳らと熱戦を繰り広げ、さらにはプロレス最強を唱え、ボクサーのモハメッド・アリや空手家で熊殺しの異名をとるウィリー・ウィリアムズらと異種格闘技戦を戦い、少年の私は憧れの眼差しで熱戦をテレビ観戦したものです。
一流選手と戦っても勝てなくなった頃、参議院議員になって、世間を驚かせました。
70歳になって、再び国政を目指すとは思っていませんでしたが、最近の橋下大阪市長の慰安婦をめぐる不適切発言などで急速に人気が下降している維新の会にしてみれば、藁にもすがる思いでアントニオ猪木に声をかけたものと思われます。
しかし、この人の思想傾向というのはよくわかりません。
スポーツ平和党時代は、今は無き民社党と友党関係にあったと記憶していますので、右寄りの革新と言えるのかもしれませんが、それもなんだか分かりません。
アントニオ猪木と言えば、「イノキ、ボンバイエ」という軽快なテーマに乗って登場してくるのを常としていましたが、これ、穏やかではない言葉です。
ボンバイエとは、アフリカはコンゴの言葉で、Boma Yeをもじったもの。
そしてその意味するところは、殺しちまえ、といったほどのこと。
元々コンゴの人々が英雄、モハメッド・アリが試合に勝利した時、興奮して叫んだとかで、それを借用したようです。
こういう人気者を担ぎ出すあたり、維新の会の終わりの始まりのような気がしてなりません。
私は橋下大阪市長という人が大阪府知事になって大阪都構想をぶち上げ始めた最初の頃から、胡散臭い人だと思い、維新の会を毛嫌いしてきました。
時代の変革期にある時に必ず現れるトリック・スターなのだと思っています。
今、安倍政権が生まれ、戦後レジームからの脱却を高らかに謳い、中国の台頭と米国の相対的な衰退という文脈の中、わが国は主要先進国の一国として生き残りをかけ、様々な改革を断行しようとしています。
そういう時代の空気が、トリック・スターを求め、機を見るに敏な橋下徹が、時流に乗ったということかと思われます。
トリック・スターは、文化的英雄であると同時に悪しき破壊者であり、あるいは賢者であり悪者など、法や秩序からみれば一貫性を欠いた矛盾する役割が属性である、とされています。
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そしてトリック・スターは、えてして哀れな末路をたどるものです。
わが国においては、素戔男尊(スサノオノミコト)などがそれに当たるとされていますね。
アントニオ猪木に「ボンバイエ!」と焚きつけるとしたら、案外それは親分でありトリック・スターである、あの胡散臭い弁護士に対するものであるような気がしてなりません。
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