私が最も敬愛する歌人、若山牧水はたいへんな大酒飲みでした。
朝2合、昼2合、夜6合の酒を欠かさなかったと伝えられます。
歌人は酒の飲みすぎが祟って43歳の若さではかなくなってしまいました。
病床にあっても酒を欲し、医者ももはや止めなかったそうです。
酒を詠んだ歌は数知れず。
その中でも、
白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしずかに 飲むべかりけり
というのは絶唱とも言うべき秀歌でしょうねぇ。
この時季、帰宅して酒を口に含むと、必ず思い出します。
![]() | 若山牧水歌集 (岩波文庫) |
伊藤 一彦 | |
岩波書店 |
それにしても、40代後半に突入し、日々の楽しみは晩酌ばかりとなるとは、私も衰えたものです。
酒の酔いがもたらす心地よさを求めて研鑽を怠り、精神の怠惰を放置するようになろうとは、若い頃には想像もしなかったことです。
加齢がもたらす衰えは、ひとつ肉体ばかりではなく、精神にも及ぶのですねぇ。
しかし私はもはや、それに抵抗する術を持ちません。
肉体よりも先に朽ちていく精神の、その朽ちいく速さに、ただ、茫然とするばかりです。