私、死体と結婚します

文学

 今朝は半年に一度の視野検査のため、千葉大学医学部附属病院に行きました。
 大学病院はとにかく待たされます。
 視力検査で待たされ、視野検査で待たされ、診察で待たされ、会計で待たされ、合計2時間ばかり待たされたでしょうか。
 どうせ待たされると思っていたので、未読の小説を持っていき、文庫本で229頁、軽やかな文体で読みやすく、待ち時間の間に読み終わってしまいました。

  近頃お気に入りの桜井美奈の「私、死体と結婚します」を読みました。
 比喩的なタイトルかと思いきや、本当に死体と結婚してしまいます。

 結婚間近で同棲しているカップル。
 明日には入籍しようというタイミングで、女が帰宅すると、男が寝室で冷たくなっています。
 女は看護師で、一見して死んでいると分かってしまいます。
 古いヒーターを使用したがゆえの一酸化中毒とみられます。
 しかし女は、冬の北海道での出来事から、4日くらいは死体は腐らないだろうと思い、わずかでも新婚生活をおくりたいと、男の死を隠したまま、役所に婚姻届を提出し、それは受理されます。
 もちろん、違法行為です。
 夫愛しさのあまりの狂気じみた行動です。
 しかしそこには、夫への愛情だけではなく、夫とその父親、幼い頃からの夫の親友が絡んだハチミツの違法輸入が関わり、それが要因か、女の幼い妹が事故死していたことが示唆されます。
 男女は互いに魅かれあい、お付き合いをして結婚を約束するわけで、それは愛情ゆえです。
 ただし女の側には、犯罪を含めた、男の隅々までを知り尽くしたいという欲求があったことが分かります。
 読む者を翻弄しながら、物語は疾走し、大団円へと向かいます。
 この作者、サスペンスを描きながら、王道からは外れるのかもしれませんが、特異なシチュエーションを作り上げるのが得意なようです。
 気楽に親しめる内容になっています。