秋の酒

精神障害

 秋も深まってきました。
 これから昼よりも夜のほうが長くなるのですね。

 正直、嫌な気分です。

 過ごしやすい陽気ではあるんでしょうが、日差しが短いと、鬱々としてしまう日が増えます。
 双極性障害という業病、寛解はあっても完治は無いそうですから、これからもきちんと薬を飲み続けることが重要です。
 寛解にいたってもう10年以上経って、自覚的には再発なんてありえないと思っているのですが、自己判断で薬を止め、ひどく悪化させた人をたくさん見ているので、薬を飲まないなんて考えられません。

 私は正常になったのではなく、大量の精神病薬により、かろうじて正気を保っているだけであって、生涯、正常になることなんて無いのだろうと思います。

 しかし、一見正常に見えるゆえ、職場は復帰したばかりの頃のように甘やかしてはくれません。
 当然です。
 給料を貰っているのですから。

 同居人は、私が躁状態の時の最大の被害者ですが、それは病ゆえと、私を許してくれています。

 手こそあげませんでしたが、ひどい言葉を投げかけたこともあったし、性的逸脱行動が起きて、他の女性と遊び惚けるにいたって、たぶん離婚するんだろうなと思っていました。
 しかし躁状態の真っ最中、離婚なんて怖くもなんともありませんでした。
 何しろ万能感が強く、神様にでもなったような気分なのです。
 その時はうつ病が治ったとしか思いませんでした。

 しかし医師はすぐに私がうつ病ではなく、双極性障害であったと見抜き、躁を抑える薬が処方され、それは劇的に効きました。
 夢から覚めたようで、反動か、ひどく落ち込みました。

 激しい躁状態、もう二度と経験したくないという思いと、あの麻薬のような万能感をもう一度感じてみたい、という思いが交錯します。
 もちろん、それでも薬は飲み続け、躁状態は今のところ人生で一度きりです。

 秋、酒が旨くなって、つい飲みすぎてしまいがちです。
 酔うと本性が現れると言いますが、饒舌になったり、わずかながら万能感を感じたりして、酒はキチガイ水と言いますが、本当にそうだなと思います。
 そもそも私は本物のキチガイ。(差別用語ですから、この記事、gooが勝手に公表を止めるかもしれません。無粋ですね)

 キチガイがキチガイ水を飲めば、2倍キチガイになるのも道理です。

 名歌をたくさん残した大酒のみの歌人、若山牧水に、

朝酒は やめむ昼酒せんもなし 夕方ばかり 少し飲ましめ

 という、愚かな短歌が残っています。
 酒飲みというもの、まったく愚かな生き物です。
 もちろん私もそこに含まれるのですが。