パラレルワールドというのは非常に魅力的な概念で、ゆえにSFやファンタジーなどの物語でたびたび題材にされてきました。
この世界とは別に、よく似た世界が同時並行でいくつも存在すると夢想することは、楽しいものです。
難しいことは分りませんが、物理学だか量子力学の世界では、パラレルワールドが実在する、という説も有力なんだそうですね。
あの時別の選択をしたいたら、今頃自分はどんな境遇だったろうか、あるいは大金持ちになっていたかもしれない、といった空想は誰でもしたことがあると思います。
最新の学説では、パラレルワールドは単に実在するだけではなく、相互に影響し合っているそうです。
別の世界の自分の行動が、今、ここにいる自分に影響を与え、また、今ここにいる自分が、あまたいる別の世界の自分に影響を与えているのだとしたら、なんだか空恐ろしくすらあります。
この説を唱える学者は、近い将来実験によってその存在を実証できると豪語しているそうですが、完全文系人間の私には夢物語としか思えません。
しかし少なくとも、現在、パラレルワールドを覗くことは出来ないわけですから、生活上、あっても無くても一緒という他ありません。
もしパラレルワールドを行き来できて、別世界の自分と話をすることが出来たなら、それはちょっと気持ちの悪い経験かもしれませんね。
現実には、自分ではない自分と面と向かって話すことは絶対に出来ないわけですから。
パラレルワールドとは全く別の現象に、ドッペルゲンガーというのがあります。
こちらは学問的に認められたものではなくて、一種の超常現象として、そういうことが起こった、という記録が残されているだけです。
自己像幻視などとも呼ばれ、自分と生き写しの人間が現れ、これを見ると死ぬ、とも言われます。
江戸時代には影の病と呼ばれ、その存在が密かに認められていたそうです。
芥川龍之介はある座談会で、二度、もう一人の自分を見た、と語っています。
医者に言わせると、脳腫瘍の患者が時折もう一人の自分を見ることがあるとかで、脳の疾患かと思うと、急に面白くなくなるから不思議です。
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ドッペルゲンガーと似た現象に、バイロケーションというのがあります。
こちらは自らの意思で分身を発生させ、あらぬ場所に現れる、と言った現象です。
ノストラダムスはこの能力で予言を行ったと伝えられており、ピタゴラスもこの能力を持っていたと言われています。
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パラレルワールドは学術的にその存在が有力視されていますから、ドッペルゲンガーやバイロケーションとは同列に論じられないことはもちろんですが、現実離れした不思議な話という意味では、この世を生きる庶民にとって、どれも同じようなものです。
空想の羽を刺激する、とても魅力的な現象たちです。
今の私たちに出来ることは、これらの不思議な現象を、在るとも無いとも決めつけず、脳を刺激する面白いお話として楽しむことしかありません。
全てが科学的に証明されたり否定されたりしたのでは、この世ならぬ物語を楽しむという、人間に与えられた高度な遊びを奪われてしまいますからね。