籠り居

文学

 仕事始めから一週間が過ぎて、ようやっと、仕事も軌道に乗ってきたようです。
 言い換えれば、忙しくなってきたということ。

 どこでもそうでしょうが、1月から3月に向けては、どうしても忙しくなります。

 寒いし、忙しいし、嫌な時季です。

 土曜日は少しですが、雨か雪が降る予報。
 首都圏では雪は大ニュースですが、積もることはなさそうです。

 うずみ火や 我かくれ家も 雪の中

 
私が偏愛する与謝蕪村の俳句です。


 冬の醍醐味は、とても寒い日に、暖かい自宅に籠り居ることでありましょう。
 その郷愁を美しく表現していると思います。

蕪村句集 現代語訳付き     (角川ソフィア文庫)
玉城 司
角川学芸出版

   太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

 という、三好達治の短い詩へ与えた影響、あるいは類似点を指摘する声も多く聞かれます。

 この詩も、冬の郷愁に満ちたものだと感じます。
 太郎と次郎とは何者じゃ?などと無粋は言いますまい。

 兄弟仲良く枕を並べて眠っているようにも、家族ではなく、それぞれの家に雪が降っているようにも受け取れます。
 どう受け取るかは、読む者の勝手。
 
 私は、近所に住む仲の良い友人の、それぞれの家に雪が降っていると感じます。
 そのほうが重層的ですし。

三好達治詩集 (新潮文庫)
三好 達治
新潮社

 一時、抗うつ薬の影響で、165センチしかない私が、72キロまで太ったことがあります。

 しかし、その直後父が亡くなり、そのショックで食欲が落ち、1年で48キロまで落ちました。

 痩せてから、ひどく寒がりになりました。

 その後5年で54キロまで戻り、それを維持していますが、寒がりなのは相変わらず。
 寒いのが恐怖ですらあります。

 それ以来、冬の楽しみを堪能するのが難しくなりました。
 クリスマスであったり、正月であったり。

 しかしその分、冬の籠り居の暖かさが身にしみます。

 上の句も詩も、籠り居の心地よさと郷愁が感じられて、私の好むところです。