細君譲渡

文学

 文学者のゴシップといえば、谷崎潤一郎が妻を佐藤春夫に譲った細君譲渡事件が有名ですね。

 それが世に発表されたのは、今から81年前の今日、昭和5年8月19日のことでした。

 某有名新聞に、谷崎夫妻及び佐藤春夫の3名連名で発表されたから、世間はびっくりぎょうてんです。

 我等三人この度合議をもって、千代は潤一郎と離別致し、春夫と結婚致す事と相成り、潤一郎娘鮎子は母と同居致すべく、素より双方交際の儀は従前通りに就き、右ご諒承の上、一層の御厚誼を賜りたく、いずれ相当仲人を立て、ご披露に及ぶべき候えども、取敢えず寸楮を以ってご通知申し上げ候。(抜粋)

 谷崎潤一郎は千代と結婚するも、不埒にもすでに夫がいる千代の妹に懸想し、千代との仲は冷え冷えとします。
 そこにやはり夫婦仲の悪かった佐藤春夫が割って入り、千代に同情し、やがて恋情を抱きます。
 数年間の紆余曲折を経て、佐藤春夫谷崎潤一郎も離婚、佐藤春夫は元谷崎夫人の千代と結婚。
 谷崎潤一郎は晴れて独身を謳歌することになります。

 よくあることと言ってしまえばそれまでですが、高名な作家同士のことで、当時のゴシップ紙は飛びついたことでしょう。

 例えば、今、平野啓一郎高橋源一郎との間で似たようなことが起きたと思えば、その衝撃が知れましょう。

 いやむしろ、高名な作家同士より、テレビ・タレントのほうがインパクトがあるでしょうね。
 江口洋介森高千里の夫婦と、石橋貴明鈴木保奈美の夫婦が細君譲渡なんてことをしたら、芸能マスコミは大騒ぎするでしょうねぇ。
 見てみたいものです。

 離婚することが軽い時代、なかなか一人の異性と添い遂げるのは難しいんでしょうねぇ。


下の作品は、佐藤春夫自らが、事の顛末を綴った小説です。

この三つのもの (講談社文芸文庫)
佐藤 春夫
講談社

下の作品は、谷崎潤一郎自らが、事の顛末を綴った小説です。

潤一郎ラビリンス〈12〉神と人との間 (中公文庫)
谷崎 潤一郎
中央公論新社

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