終戦のエンペラー

映画

 今日は朝一番で映画館に足を運びました。

 観たのは、ハリウッドが製作した、連合軍による日本占領初期を描いた歴史物「終戦のエンペラー」です。

 

 連合軍総司令官マッカサーに命じられ、誰が真なる戦争責任者なのか、また、天皇を戦犯として逮捕することが可能かを探ることになったフェラーズ准将。
 彼はかつて米国に留学していた日本人女性と恋仲に陥り、戦争が迫る中、帰国した彼女を追って来日し、日本兵の心理について論文を書いた知日派です。

 マッカーサーは天皇を訴追することによって日本人が暴動を起こし、やがては日本全土が赤化することを極端に恐れています。
 しかし、米英をはじめとする戦勝国の国民は天皇を処刑することを望んでいることも熟知しており、次期大統領選挙への出馬を考えているマッカーサーは、早期に日本再建の道筋をつけて選挙準備に入るためには、天皇を訴追できない合理的な理由を戦勝国の国民に示したうえで昭和陛下を利用し、円満な占領の終結を目指します。

 その意を受けたフェラーズ准将ですが、大日本帝国の政府要人は黙して語らず、しだいに天皇訴追もやむなしと考えるようになります。

 任務の合間には、かつての恋人の叔父で陸軍大将宅の自宅を訪ね、恋人が空襲で亡くなっていたことを知り、しかも届けられるはずのない大量の彼あての手紙を残していたことを知り、手紙を読みながら、しばし、号泣します。

 恋物語を描きたかったのか、歴史の闇を描きたかったのか、なんだかよくわかりません。

 その上人物の描き方が平凡で、歴史の闇を炙り出すこともできず、中途半端な作品に堕しています。

 また、必要以上に日本及び天皇家というものを神秘的に、しかもひいき目に描き、それが安っぽさを倍加させています。

 マッカーサー元帥にトミー・リー・ジョーンズ、東条英機元首相に火野正平、木戸幸一内務大臣に伊武雅刀、近衛文麿元首相に中村雅俊、天皇側近の次官に夏八木勲、恋人の叔父の陸軍大将に西田敏行と、個性的な役者陣をうまく活かせていません。

 印象的だったのは、宮中でフェラーズ准将と会談した内務次官が、昭和陛下は戦争を望んでいなかった証しとして、おじい様である明治大帝の御製、「よもの海 みなはらからと 思ふ世に など波風の立ち騒ぐらむ」を朗吟する際、起立して45度の角度で礼をしたまま、詠んだこと。
 しかも他の部下たちも一斉に45度の姿勢を保ちます。
 日本人の私が観ても異様な光景です。

 また、日本軍の残虐行為を責めたてられた近衛文麿が、「我々は欧米列強を手本として植民地獲得に励んだのであって、有罪と言えば日米ともに、さらに英仏独伊、スペイン、ポルトガルなど植民を持った国はみな有罪だ、しかし誰がそれら国々を裁いたか、日本だけが裁かれるのは理不尽だ」と怒りをぶちまけるシーンは、わが意を得たりと思いましたねぇ。

 いずれにせよ、米国製の映画ですが、日本に対して贔屓の引き倒しみたいなところがあり、これはきっと中韓をはじめ、かつて大日本帝国の支配を受けた国、及び、米英など大日本帝国と直接戦った国の人々は不快に感じるんじゃないかと思いました。

 映画としての完成度は満足いかないものでしたが、米国人は懐が深いと思わせる作品ではありました。

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