肉体労働

仕事

 今日は午前中、肉体労働を行いました。

 新しくフランスから来る招聘研究者の研究室を調えるため、古くて使わなくなった机やキャビネット、書籍などを、別棟にある廃棄物倉庫に運ぶのです。
 昨日より大分涼しいとはいえ、湿度が高く、大汗をかきました。
 作業終了後、冷水シャワーを浴びて体を冷やしましたが、事務室の冷房は7月にならないとつかないため、事務室に戻って汗がひくまでしばらくかかりました。

 肉体労働を専業としている方、とくに引っ越し業者などは、毎日がしんどいことでしょう。
 そういう方々の勤勉な勤務態度に深い敬意を表します。 

 
坂を降りて来たのは一人の若者だった。
 肥え桶を前後に荷い、汚れた鉢巻をし、血色のよい美しい頬と輝く目を持ち、それは汚わい屋(糞尿汲み取り人)であった。
 彼は地下足袋を穿き、紺の股引を穿いていた。
 5歳の私は異常な注視でこの姿を見た。

 三島由紀夫「仮面の告白」の有名な一場面です。
 三島由紀夫自身は、体が弱く、本ばかり読んでいる青白いインテリであったわけですが、肉体労働者や軍人など、頑強な肉体を持つ職業人の健康的な美に、同性愛的な憧れを持っていたようです。
 しかも5歳の頃から。

 そう考えると、作家として名を成した後、自衛隊に体験入隊したり、ボディ・ビルをやったりして体を鍛え、楯の会というおもちゃの兵隊のような私兵部隊を作って、挙句の果てには自衛隊に昭和維新断行への決起を促し、かなわないと知るや愛人でもあった森田必勝とともに自決する、という狂気じみた蛮行も、彼の持って生まれた性欲にその原因があると知れば、少しは合点がいくのではないでしょうか。 

 私の職場には、様々な肉労働を専門とする業者が出入りしています。
 電気関係、園芸関係、清掃、などなど。
 以前研究のため神社の社を作るということになり、その時現れた宮大工の集団はかっこよかったですねぇ。
 全員藍染の作業着で、足はぴったりとして、足元は白い足袋に雪駄。
 体も絞られていて腹が出ているやつなんかいません。
 ニッカポッカをだらしなく履いているペンキ屋風のやつとか、地下足袋をはいたやつなど一人もいません。 
 それを見たのはもう私が30台後半の頃ですが、5歳の三島由紀夫が汚わい屋に対して持った強烈な憧れの気持ちが、少し理解できるような気がしました。

 私もせり出してきた腹をどうにかしたいと思うのですが、生来の運動嫌いと食いしん坊の二重苦で、なかなか思うにまかせません。
 しかしきっと、日に日に筋骨隆々としていくボディ・ビルは、成果が見えるだけに楽しいのでしょうね。
 すぐ近くにコナミ・スポーツ・クラブがあるんですが、温泉とサウナしか利用したことがありません。

 やれやれ。

仮面の告白 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
三島由紀夫と楯の会事件 (角川文庫)
保阪 正康
角川書店
日本改正案―三島由紀夫と楯の会
松藤 竹二郎
毎日ワンズ

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