今日は国立能楽堂に出かけ、能見物としゃれこみました。金春流の定例会です。
能は「班女」と「巴」、狂言は「謀生種」です。
「巴」は、旅の僧がある女に出会います。
里の男に話を聞くと、この一帯は木曽義仲を奉っている、とのことで、僧が弔いをすると、さっき会った女が甲冑姿で現れます。それは木曽義仲に使えた巴御前の幽霊でした。巴はひとしきり戦の場面を舞ってみせ、ただ一人落ち延びた自分を弔ってくれるように僧に頼みます。
女の格好で槍や刀を振り回す姿は勇壮ですが、そこには敗軍の将に仕え、死してなお、成仏できない、戦の不毛さやせつなさが描かれているのです。
「班女」は、吉田少将と契りを結んだ遊女が、少将とかわした扇ばかりに見とれ、務めを果たさないため、追放されてしまいます。女は狂女となってしまいます。加茂庄で吉田少将は狂女の舞を見物し、これがかつて扇の契りを結んだ女だと気づき、二人は再会を喜び合います。
男女の機微を描いて秀逸です。しかし、女の舞のシーンが必要以上に長く、すこしだれました。
それにしても、能というのはその衣装も、ストーリーのシンプルさも、無表情で舞う様も、すべてがスタイリッシュですね。動きが少ないのが難点ですが、一幅の絵を見るような気持ちで鑑賞すれば、楽しめるのではないでしょうか。
狂言は現代のコントとほぼ同じで、単純に楽しめます。古来、日本人は能と狂言を同格に扱ってきました。シリアスなドラマである能と、単純なコントである狂言。
喜劇を重視したというのは、日本人の高い見識を示していると思います。
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