オーストリアの高名な教育学者であったルドルフ・シュタイナーは、同時に超感覚的な知覚を身に付けた神秘思想家でもあり、マダム・ブラヴァッキーが創設した神智学協会の初期メンバーでした。 マダム・ブラヴァッキーです。
しかし神智学協会が交霊術や占いなどを盛んにするようになると、シュタイナーは神智学協会を離れ、人智学協会を設立します。 神智学協会のマークです。
彼は霊的な出来事や超感覚的な知覚に関しても、客観的事実を解明する自然科学的態度が必要不可欠であると考えたのです。ルドルフ・シュタイナーです。
マダム・ブラヴァッキーは超感覚的知覚により、宇宙の成り立ちからアトランティス大陸など、現代人に先行する文明の歴史を描いた「シークレット・ドクトリン」を上梓します。
![]() シークレット・ドクトリン | |
ビクターエンタテインメント | |
ビクターエンタテインメント |
シュタイナーはこれに触発され、やはり宇宙の成り立ちから歴史を書き記した「アカシャ年代記より」を発表します。
![]() | アカシャ年代記より |
高橋 巌 | |
国書刊行会 |
私はこれを高校生の頃読みましたが、月は地球から飛び出した物体の塊である、という説を読んだ時は、ちょっと頭がおかしいのでは、と思いました。
ところが近年、月の成り立ちは巨大な隕石が地球に衝突(ジャイアント・インパクト)し、その勢いで地球の一部が地球から分離して跳ね飛ばされ、月が出来た、とする説が有力です。
シュタイナーは幻視によってこの現象を見たと考えられ、当時誰も考えなかったジャイアント・インパクト説を、見たままに表記したのでしょう。 人智学協会本部です。
シュタイナーによれば、人間には五感の他に7つの感覚があり、これは本来だれでも持っているものなので、正しく訓練すれば、7つの感覚=超感覚的知覚を身につけることができると言います。
超感覚的知覚の獲得によって、人類は新たな進化を始めるというわけです。
このような神智学・人智学等の神秘主義思想、サド侯爵の哲学的ポルノ小説、悪魔崇拝や秘密結社に関する本を、高校生の頃むさぼるように読みました。サド侯爵です。
神秘主義によって、私は仏教で言う悟りにも似た感覚を、一気に獲得できると考えていたのです。
![]() | サド侯爵の生涯 (中公文庫) |
澁澤 龍彦 | |
中央公論新社 |
大学に入ってから必要に迫られて日本古典を中心に読書するようになりましたが、その世界は意外にも私が好んだ西洋オカルティズムの世界と近い心性を持っていました。
幽霊や妖怪が登場するのは当たり前。
しかもわが国古典文学のそれは、西洋オカルティズムに比べてはるかに分かりやすく、スタイリッシュなものでした。
正直西洋オカルティズムの分かりにくい翻訳文に辟易していたせいもあり、私が国文学に深く傾斜し、その必然として仏教や儒教などの東洋思想に興味を持つようになったのは当然すぎる結果でした。
もう遠い記憶でしかない西洋の神秘思想ですが、私は今も、そこになんらかの真が存在しているであろうことを予感しています。
ただそれは、例えばイチローにしか分からない境地、白鳳にしか分からない境地、故三遊亭円生師匠にしか分からない境地、小津安二郎にしか分からない境地のようなものなのではないでしょうか。
選ばれた天才にしかわからない神秘思想にはまることは、凡人にとって無駄な回り道でしかありますまい。
凡人には凡人なりの、真実の悟りへの道があるでしょう。
でも年のせいか、最近、少年時代の数年間、じりじりした思いで学び、超感覚的知覚を得る日を心待ちにした、今となっては浪漫的とも言うべき日々が、変に懐かしく思い起こされるのです。
![]() | 神秘学概論 (ちくま学芸文庫) |
Rudolf Steiner,高橋 巖 | |
筑摩書房 |
![]() | いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫) |
Rudolf Steiner,高橋 巌 | |
筑摩書房 |
![]() | ブラヴァツキーのことば365日 |
ウィニーフレッド・パーレィ,山口 多一 | |
アルテ |
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