自由に

文学

 定型からも季語からも解き放たれた自由律俳句。
 自由に作っていいよ、と言われても、かえって戸惑うのが俳句詠みの常。
 それでも自由律俳句ばかりを詠み続けた明治生まれの二人。
 種田山頭火と尾崎方哉。
 そして、昭和の終わりとともに25歳で逝った住宅顕信。
 種田山頭火の句は明るく活発。
 尾崎方哉の句はさびしく不気味。
 住宅顕信は尾崎方哉に憧れて、憧れの人のゆえか若くして発病した難病のゆえか、幸薄く鋭利。

 
この旅 果てもない旅のつくつくぼうし  種田山頭火

 蟻を殺す 殺すつぎから出てくる      尾崎方哉

 とんぼ 薄い羽の夏を病んでいる     住宅顕信

 
私はあまり自由律俳句を好みませんが、上の三人は別格というか、多分従来の形式では表現し得ない世界を持ち、それを現すのに自由律俳句が最も適していたのでしょうね。
 素人が手を出すと、限りなく滑稽に堕しますので、ご注意。

 上の三句は、夏と虫という共通点で選びました。
 それぞれの俳人の特徴がよく出ていると思います。
 
 明治生まれの二人は高学歴ながら酒で身を持ち崩し、最後は知り合いの寺に厄介になりました。
 住宅顕信は学歴はなく、酒もやらず、出家しました。

 こういう浮世離れした生き方、やってみたいですねぇ。
 でも私は臆病で、衣食住が整っていないと不安で仕方ないですから、無理でしょうねぇ。
 宝くじでもあたったら、ふわふわと漂い出してみたいものです。

山頭火句集 (ちくま文庫)
村上 護
筑摩書房
尾崎放哉全句集 (ちくま文庫)
村上 護
筑摩書房
住宅顕信全俳句集全実像―夜が淋しくて誰かが笑いはじめた
池畑 秀一
小学館

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