亡父の蔵書から、大岡信著「若山牧水 流浪する魂の歌」という評伝を読みました。
明治以降の歌人では、私は若山牧水の歌をもっとも愛吟しています。
このブログでも、過去何度も若山牧水の絶唱を紹介してきました。
しかし、今まで私は若山牧水の歌しか知りませんでした。
どのような人生をおくったのかはまるで興味がなく、ただ桁外れの大酒飲みだったらしい、ということだけ、知っていました。
九州に生まれて早稲田を出、早稲田では北原白秋と同窓で、後輩の萩原朔太郎とも親交があったこと。
人妻と五年に及ぶ不倫に苦しみ、後の奥様とはこの不倫愛が破れて間もなく若山牧水からの猛烈なアプローチによって成ったものであること。
常に金に困っていたこと。
結婚後は狂ったように乞食坊主のような格好で日本国中を旅したこと。
朝昼晩必ず酒を飲み、常に酩酊状態にあるアルコール依存症であったこと。
どれもこの評伝で知りました。
私はあまり評伝を好みません。
歌人であれ詩人であれ小説家であれ絵描きであれ、要はその作品がどのような物であるかが重要で、どんな生活をおくり、人柄はどうであったかなど、瑣末な問題だと思っているからです。
それはこの評伝を読んでも変わりません。
ただ、評伝というものが好まれるのには、理由があるのだなぁと思いました。
ゴシップ記事を読むような面白さがあるのです。
この歌が生まれるにはこういう経験があったのだなと、納得させられるのです。
小品でしたが、土曜日の朝のひと時、楽しませてもらいました。
![]() | 若山牧水―流浪する魂の歌 (中公文庫 M 100-2) |
大岡 信 | |
中央公論新社 |