若葉が凶暴なまでの精気を放って私を襲う季節になりました。
私は節操無く勢力を広げようとする若葉が、その無邪気さゆえに、好きになれません。
人間でも犬でも猫でも子どもは無邪気にオイタを繰り返し、大人を悩ませますね。
植物とても同じこと。
若葉は、言わば生命力に溢れた子ども。
疲れた中年の私には、まぶしすぎるというものです。
考えてみると、わがくにびとは古くから春には寿命の短い桜を愛で、秋には枯れかかった葉でしかない色づいた木の葉を観に遠出してきました。
どちらも、若葉のような生命力あふれるものではなく、どちらかというと滅びゆく命を端的に感じさせるはかないもの。
その先人たちの心性が、私の心に働きかけて、若葉をけむたく思わせるのでしょうか。
五月病なんて言いますね。
念願の会社なり大学なりに入って気が抜けてしまい、うつろになるのがちょうど若葉のころ。
若葉の無邪気な毒が、新人たちを蝕んでいるとは言えないでしょうか。
幸い私は、若葉の毒気にあたりながらも、それを跳ね返す鉄のような精神を身に付けたようです。
しかし鉄の精神、若葉のような伸びようとする力に対抗するのは得意なのですが、夕日や乱れ散る桜など、はかないものには全く歯が立たないのです。