現代アートの世界において、わが国が草刈り場となっているらしいことを、時折耳にします。
わが国の美術愛好家は、今も西洋美術でいえば印象派あたりに留まっている人が多く、グロテスクとも頓知とも言える現代アートに拒否反応を示すのでしょう。
例えば美少女フィギア。
あれはわが国では主にヲタクの人々が好む特殊な趣味であるように捉えられ、美術作品として取り上げることはありません。
しかし、米国などではあれは美術作品として取引され、わが国で1万円程度で仕入れたものが、40万も50万もの高値で売買され、しかも飛ぶように売れているのだとか。
さすがにそれを知ったわが国のフィギア職人が声を上げ、一時期よりは値が上がったようですが、今も美術作品と見なすことはありません。
同じようなことは幕末から明治初期にかけても起こりました。
わが国では低俗な流行画としてしか見なされず、物を包むのに使ったりしていた浮世絵が、欧州に渡るや、革新的な美術作品としてもてはやされ、その技法を真似た絵画が欧州の画家によって数多く製作されました。
村上隆のように、様々な現代アートに挑戦し、その一つとして美少女フィギアを作る人はともかく、美少女フィギア専門の人は、アーティストというより職人と見なされているように感じます。
村上隆の美少女フィギアです。
現代美術の世界は、火薬を爆発させて美術作品を製作する中国の蔡國強だとか、素人には難解な頓知の迷宮に入りこんでしまったかのごとくです。

蔡國強とその作品です。
今となってはピカソなんて分かりやすいほうですね。
しかし、美術の本質が変ったわけではありません。
観る者の心を捉えることができれば、それは名作なわけで、とっつきにくさは問題ではありません。
要するに、考えることをやめ、理解しようとせず、感じればよいのです。
わが国においても、現代美術が正当な評価を得られるようになってほしいと、願ってやみません。
少なくとも草刈り場になるような状況は改めなければならないと思うのです。
 | 蔡國強「原初火球」展カタログ |
鷹見明彦,金坂留美子,金坂留美子,小野修子,甲斐渉,ブライアン・スモールショウ |
P3 art and environment |

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