草祭

文学

 インフルエンザによる出勤停止も今日まで。
 もうすっかり元気です。

 最近お気に入りの恒川光太郎の作品を読みました。

 連作短編集、「草祭」です。

草祭 (新潮文庫)
恒川 光太郎
新潮社

 小さな田舎町、美奥を舞台にした作品群で、5編が収録されています。
 一つ一つは独立した物語ですが、通して読むと、繋がりがあることが分かる仕掛けになっています。

 美奥は様々な異界へと繋がる、いわばこの世の一つ奥に存在している町。
 主人公たちは、異界に迷い込み、様々な体験をするのです。

 「けものはら」は、けものはらに迷い込み、出られなくなった男子高校生の物語。
 彼はそこで獣人に変じていくわけですが、母親との複雑な物語が語られます。

 「屋根猩猩」は女子高生の独白という形をとって、ある地区の守り神に変じていくお話。

 「くさのゆめがたり」は、はるか昔を舞台に、美奥誕生の秘話が語られます。

 「天化の宿」は、山中の不思議な宿で、女子高生が苦解きという儀式のための、独特のゲームに高じるお話。
 結末が意外です。

 最後の「朝の朧町」は、もっとも幻想的で美しい物語です。
 これも不思議な町に誘われた者が体験する、息苦しいまでに切ない物語です。

 こうして一作ずつ、短く紹介していくと、実に陳腐な表現にしかならず、嫌になります。
 しかし、実際に読めば、その物語世界の豊穣さに驚嘆することでしょう。

 この作者の作品を、まだまだ読んでいきたいと思います。 


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