たいして広くも無い日本国に、多くの人々がびっしりと蟻のように這い回り、あくせく働いて小金を得るというのは、なんだか悲しいものですね。
もちろん、私自身も悲しい働き蟻の一人です。
蟻たちは酒を喰らっては上司や同僚の悪口を吐き、あるいは政治の怠慢を嘆き、時にはスポーツだの芝居見物だのにうつつを抜かして生きています。
もちろん、私もそうです。
蟻たちはまた、恒久平和の理想に感激し、砂の国の争いや汚れた星に憤慨します。
もちろん、私もそうです。
愛すべき蟻たちは、そうやって日々を過ごし、死んでいきます。
もちろん、私も。
そのような、人間らしく見える蟻と、昆虫の蟻の生の形態に、如何なる違いがありましょうや。