見果てぬ夢

思想・学問

 現在、天皇皇后両陛下の傘寿を寿ぎ、奈良国立博物館で正倉院展を開催中だそうですね。
 先般NHKでその特集番組を放送していました。

 はるか古代に、建築にしろ、絵画にしろ、また、楽器や衣装にしろ、非常に優れた文物を作り出し、それが今も鮮やかに保存されているとは、誠に喜ばしく、また驚くべきことです。

 人が人たる所以のものは、実際の用にたたずとも、美しい物を作らずにおられないことにあるのかもしれません。

 そうかと思えば、人は有史以来人間という同じ種同士で殺し合いを続けており、それは今も無くなっていません。
 それならば人の人たる所以のものは、殺し合いにあると言えるかもしれません。

 この相反する人間の性向が、同じ人間のなかに同時に存在することが、人間の不思議であり、人間たる所以なのでしょうか。

 物事には二面性があるようです。
 善と悪、戦争と平和、○○教の正義と××教の正義など。

 これらは物事の裏表で、どちらかが失われればもう片方の存在も危うくなります。

 悪が無くなれば善も消滅し、戦争がなくなれば平和の達成も不可能になりましょう。

 因果な世の中です。

 私たちは言葉では恒久平和を求め、善が普く世を覆うことを求めながら、相も変わらず悪事を働き、殺し合いを続けています。

 悲しいかな、これが世界の現実です。
 これを根本的に変革させることは、人が人であるかぎり不可能であるかのごとくです。

 私はただ、おのれ一人の平安を求めるしか、出来ることはありません。
 おのれ一人救えずに、他人を救おうなんておこがましいことは出来ません。

 自由民主主義のわが国にあっても、世の本質は混沌とした闘争状態であるようです。

 聖徳太子が和を以て貴しと為すと十七条憲法に記してから、いったいどれだけの時がながれ、日月の積み重ねの間、どれだけこの条文が踏みにじられてきたのでしょう。

 見果てぬ夢を見た聖徳太子には深く同情せざるをえません。

 冷酷な私はそんな無駄な夢を見ることなく、私一人を救う道を求めたいと思っています。

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