親殺し

思想・学問

 近年、家族・親族間殺人が、全殺人事件の50%を超えている、という驚愕のニュースを聞きました。

 特に多いのが、子供による親の殺害。
 理由として、超高齢化社会における老々介護の問題や、20年以上も続く不況、個人主義が広まったことによる家族の絆の喪失などが考えられる、と識者は書いていました。

 しかしそれは、表層的な問題ではありますまいか。

 現代日本社会において、人を殺すということは、たいへん重い罪であり、まして尊属殺人がことさら重い刑を下されるのは、日本人なら誰もが知っていることです。

 それを乗り越えて親を殺害するとは一体どう理解すればよいのか、私にはわかりません。
 ましてわが国で発生する殺人事件の半数以上が家族・親族間で行われるとなると、赤の他人よりも家族・親族のほうが怖ろしいということになってしまいます。

 なかには、親の資産を担保に勝手に借金を重ね、ついに家が競売にかかる段階となって、自殺を決意した62歳の男が、無理心中を図って90近い母を殺害し、父は殺害にいたらずに生き残り、父が息子を裁く法廷に車椅子で現れ、寛大な刑を希望したという泣けない話もあります。

 子ども、特に男の子というものは、人生のいずれかの段階で精神的親殺しを行うものであろうと思います。

 男の子が成長する過程において、親とくに父親は最大の障害になるからです。

 「スター・ウォーズ」においても、父親たるダース・ベイダーと息子たるルーク・スカイウォーカーが、わが国のチャンバラを基にしたという光剣(ライト・セーバー)で一騎打ちをする場面が印象的ですね。

 

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 しかし親たる者は、自らがかつて精神的親殺しを行って成長した経験があるため、男の子が自分を精神的に殺害しようとすることを予見し、それを許すものです。

 そして精神的親殺しを終えた息子は、心の底から親の心を知り、親に対する尊敬を深めてきたというわけです。

 私もまた、17歳くらいの頃に精神的に父親を殺害しました。

 であればこそ、私は亡き父が限りなく恋しいのです。

 不思議なのは、母親に対しては強い憎しみも強い愛情も感じないこと。
 まぁ、母が人格者ゆえなのでしょうけれど。

 精神的親殺しと、実際に親という生命体を殺害することには、たいへんな隔たりがあります。

 実際に親を殺害してしまうということは、言わば精神的親殺しに失敗したためとも言える大事件で、そのようなことがわが国で頻発するということは、由々しき事態と言わざるを得ません。

 ではそれをどう克服すれば良いのかを思うとき、私はただ沈黙せざるを得ません。

 現代日本社会において、古い価値観を復活させようとすることは無駄な努力と言うべきで、また、経済的な問題に至っては、何をかいわんやです。

 できることは、現代日本社会において、そのような深刻な問題が起きているのだということを啓蒙し、国民一人一人の覚醒をうながすことでしょうか。

 それでは手ぬるいとの批判は当然起こるでしょう。

 しかし、長い歴史の果てに、家族や親族を殺害する者が増えてしまったことを思えば、それを解決するには、同様に長い時間がかかると思うのです。

 まずはせめて、私が家族・親族を殺さないと決意することから始めたいと思っています。

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