昨夜は五十嵐貴久のミステリー「誘拐」を一気に読みました。
![]() | 誘拐 (双葉文庫) |
五十嵐 貴久 | |
双葉社 |
示唆に富んだ、上質の娯楽小説です。
会社の人事担当課長として、苦しみながらリストラを進める秋月。
ある時リストラを苦に、元社員が一家心中。
元社員の娘が秋月の娘の親友であったことから、秋月の娘も自殺してしまいます。
秋月自身も退職し、綿密な誘拐計画を立てます。
歴史的な条約を結ぶため韓国大統領が来日するため、警察はその警備に全力を挙げるため、極端に警察力が手薄になるのを見計らって、なんと総理大臣の孫娘を誘拐するのです。
格差社会への憤り、それを許す政府への怒りが、秋月を突き動かします。
息をもつかせぬ疾走感をもって、秋月の犯罪と、翻弄される警察の姿が描き出されます。
引き込まれました。
結末はあっと驚くもの。
基本的に邪悪な人間が出てこない、爽やかなミステリに仕上がっています。
それが物足りない部分もありますが、読後感は清涼です。
まずまず、楽しめました。