貧しい国へ

社会・政治

 日曜日。
 同居人は今日も実家で義母のお世話。
 大変です。

 私はひとり、寅さんのDVDを2本借りてきて、しばし、笑い転げました。
 最近、寅さんばかり観ています。
 寅さんをはじめ柴又の人々の切れの良い江戸弁も爽やかで、耳に心地よい。
 失恋しては旅に出る寅さんの姿には哀愁が漂い、何度観ても飽きさせません。
 すでにシリーズの全てを観ていますが、つい、2回、3回と借りてきてしまいます。

 明日からの仕事を思うととてつもなく憂鬱になりますが、これが勤め人の辛いところ。
 寅さんのような渡世人には渡世人の辛さがあるごとく、勤め人には勤め人の辛さがあります。

 わずか48時間前、金曜日の夜には格別の解放感を覚えますが、日曜日の夜はその真逆。
 48時間前に戻りたいと毎週思います。

 会議資料の作成、会議のお世話、印刷物の作成、そして年度末の予算の管理執行、わずかばかり狂気じみた職場の人々。
 どれも辛いことばかり。
 世のサラリーマンがみな同じ思いをしていると自らを慰めてみても、他人が辛いからといって自分の辛さが軽減されるわけではありません。 

 思えば就職して30年、時代は悪い方へ悪い方へと向かっていきます。
 就職して10年ばかりは景気が良かったのですが、もうダメです。
 バブルがはじけてから給料は上がらず、人員削減で一人一人の仕事が増え、メンタルをやられる者も多くいます。
 私が学生の頃、バブルで浮かれる人々は、最強の通貨となった円を握りしめて海外旅行を楽しみ、我が日本国は永遠の繁栄を続けるのだと信じていました。

 私も円を頼みに海外へ出かけ、面白おかしい旅行を味わったものです。
  それが今では、わが国は貧しい国へと落ちつつあります。

 栄枯盛衰は人の世のならいとはいうものの、落ちていく感じが気持ちを沈ませます。

 そんな時だからこそ、高度経済成長期からバブルの頃までを舞台にした「男はつらいよ」というシリーズに、郷愁を感じるのかもしれません。