迷妄

文学

 今年は桜をゆっくりと鑑賞する時間がとれませんでした。
 先週末は桜は満開でしたが、土日ともあいにくの雨。
 通勤の車から見る桜、早くも散り始めています。

 今週末、散り乱れる花見を楽しむことができるでしょうか?

 散る桜 残る桜も 散る桜

 
良寛はそう嘆きました。

訳註 良寛詩集 (ワイド版 岩波文庫)
良寛,大島 花束,原田 勘平
岩波書店

 桜は必ず散るもの。
 短い文句のなかに、諸行無常を詠みこんだのでしょうか。

 人もまた、必ず死に行くもの。

 40代後半になって、近しい人の訃報に接することが多くなりました。

 はるか年上の先輩ならまだしも、後輩が心筋梗塞で突然死したり、自殺したり。
 その都度、私自身の未来を思うとともに、来し方を振り返らずにいられません。

 私のこれまでの生き方は間違っていたのではないか、少なくとも為すべきことを為さず、ただ生きるため、いや、死なないためだけに職にしがみついてしまったのではないか、という後悔の念に捕らわれることが多くなりました。

 それというのも、ここまで来てしまっては、今の生き方を変えることは出来ないのだという、深い諦念の為せる業のような気がします。

 しかし、人は未来にむかってしか生きられないもの。

 それならば私は、今後、何をもって心の平安を得、さらには人生を充実させたらよいのでしょう?

 中年から初老に近づき、未だに迷妄の森を彷徨っているかのごとくです。


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