追悼 三國連太郎

映画

 日本映画界で独特の存在感を放ち続けた怪優、三国連太郎が90歳で逝去された、との報にふれました。

 最近では「釣りバカ日誌」の印象が強いですが、じつは社会派の映画にも数多く出演しています。

 この人の出演作で印象に残っている作品を挙げろと言われると数が多すぎて難しいですが、強いて挙げるなら、「皇帝のいない八月」「神々の深き欲望」「ひかりごけ」の3本でしょうか。

 「皇帝のいない八月」は、日本改革を理想に掲げ、クーデターを企てる自衛隊の若い士官たちと、その企みを察知した自衛隊首脳部の暗闘を描いたスリリングな作品で、三國連太郎はクーデターを企てる将校たちに立ちふさがり、クーデター阻止のためには拷問も暗殺も辞さない自衛隊幹部を演じて迫力満点でしたねぇ。

 「神々の深き欲望」は南の離島での因習的な世界を描いていかにも不気味です。

 「ひかりごけ」は知床の海で遭難し、やむを得ず死んだ仲間の人肉を喰らって生き残る船長を演じていました。
 帰国後、裁判にかけられて、裁判官に向かって「不服ではありませんが、我慢しています」と応えるシーンが印象的でした。
 生の人肉を無表情で口に運び、人肉食を拒む部下に、「そんな、もったいない」とつぶやく船長の姿は、人間が生きることの過酷さを感じさせます。

 この人が出演すると、映像に重厚な感じが漂いました。
 そして、社会派ドラマから喜劇まで、なんでも演じる役者バカでしたねぇ。

 戦中、徴兵を拒んで逃げ回り、結局家族から通報されて戦場に行ったとか。
 戦後は一貫して共産党を支持していましたね。

 役者になったきっかけも、路上で映画会社の人にスカウトされ、弁当を食わせてやる、と言われて撮影所に出かけたのが最初だそうです。

 それまでは犯罪まがいのことも含めて、じつに様々な職を転々としていたようです。
 でもその経験が、演技に深い味わいを与えたのでしょう。

 日本映画界は貴重な役者を喪いました。

 ご冥福をお祈りいたします。

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三國連太郎,内藤武敏,相澤徹
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