逃げ恥

文学

 さっきまで、「逃げ恥」と略されるTVドラマを観ていました。
 なんとなく、観るともなく観ていたら、結構引き込まれました。
 新垣結衣と星野源との恋愛が主たるストーリーですが、サブ・ストーリーと言うべきものがあって、それは49歳のキャリアウーマンを演じる石田百合子と、17歳も年下の男との恋愛模様。

 じつは私は石田百合子と同い年。
 それもあって、サブストーリーを興味深く観ました。
 アラフィフであることを理由に、17歳年下の男の熱情を断り続けるキャリアウーマン。

 若さを失ったゆえの悲哀が、そこはかとなく感じられます。

 私はと言えば、ずいぶん流されてしまったなと感じているということ。

 学生時代は学校でふらふらと漂い、就職してからは自分を殺して厳しい社会の中を浮遊してきました
 それで、気が付いたら50歳になっていました。

 私はかつて、若さを楽しんだことがあっただろうかという根源的な問いを、自らに課さざるを得ませんでした。

 真昼日の ひかり青きに燃えさかる 炎か哀し わが若さ燃ゆ

 若山牧水の若い頃の短歌です。
 若さを真夏ととらえています。

 倉橋由美子は名作「シュンポシオン」のなかで、大学時代を人生の夏休みと表現しました。

 確かに大学生の頃は、煌めいていたと言ってもよいかもしれません。
 また、就職して5年間くらいは、やりたい放題やって、天下を取ったような気分でいました。

 しかし、後輩が続々と入ってきて、役が就いて、と言った間に、煌めきは静かに消え失せ、疲れた中年男が出来上がりました。

 それを悔いても仕方の無いことですが、なんとなく、過去を悔いる気持ちが、心の奥底で、ゆらゆらと小さく燃えているように感じます。

 それを消し去り、心の安寧を得るのは、ずいぶん難しいことのように思います。

 うつ病発症から15年。
 寛解したとはいえ、物事をネガティブに考える癖がついてしまいました。

 病とは恐ろしいものです。

 しかし、80歳まで生きるのだとしたら、まだ30年もあります。
 老け込む年では無い筈です。

 これからでも、物事をポジティブにとらえる思い癖を獲得したいと思っています。

 ちなみに「逃げ恥」では、49歳のキャリアウーマンと17歳年下の男の恋愛は、成就するのであろうと示唆して終わります。