遊園地

文学

 色川武大の短編に、「少女たち」という佳品があります。
 「離婚」という短編集で読むことができます。

離婚
色川 武大
文藝春秋

 この小説では、訳ありの少女たちと共同生活を送る男が描かれますが、共同生活は終りを告げることになります。
 それを惜しむ少女たちに、男は一言、「もう遊園地は終り」と宣言します。

 少女たちとの幻想的とも言える現実離れした生活とその終りを描いて、少女たちの成長の物語とも、男の孤独を表す物語とも読める、切なくも美しい作品でした。

 今夜、私は日本橋人形町の懐石の店で、15年来の付き合いになる女友達2人と一杯やる予定になっています。
 一応、遅い新年会ということで。

 今思えば、15年前、私が激務を強いられる職場で耐えられたのは、この2人を始めとして、多くの気の合う同僚に恵まれたからだろうと思っています。
 激務の合間に飲みに行ったりカラオケに行ったり。
 私は行きませんでしたが、スキーなんかにもグループで行っていたようです。

 地獄の中の小さな遊園地のようでした。

 1人は都内に1LDKのマンションを購入して一人暮らし。
 もう1人は長いこと内縁関係にある男と暮らし、未だに籍を入れようとしません。

 不思議なもので、社会人になってからできた友人は、女性ばかりです。
 多分男同士だと利害関係や上下関係が邪魔するのでしょうね。
 そういう意味では、5年前、リワークに通っていた頃、社会人になって初めて貴重な同性の友人が出来ました。
 職種も立場も異なっていたからだろうと思います。

 今日会う二人と細々と続いているのは、二人が独身だからかもしれません。
 他の女友達は、ほとんど結婚して子供を授かったため、メールのやり取りくらいで実際に会うことは叶いません。

 私たちの小さな遊園地は、まだ営業中のようです。

にほんブログ村 本ブログ 純文学へ
にほんブログ村


本・書籍 ブログランキングへ