キャメロン・ディアス初の本格サスペンスというふれこみの「運命のボタン」を観ました。
でも内容はサスペンス風のSFですね。
ある日、顔が半分焼け爛れた老紳士が現れて、24時間以内にボタンを押せば100万ドルやる代わりに、見知らぬ誰かが死ぬ、という赤くて大きなボタンがついた箱を置いていきます。
それを押すかどうか夫婦で協議した結果、夫は胡散臭いと言って押すことに反対しますが、妻は100万ドルという大金に目がくらみ、ボタンを押してしまいます。
100万ドルは翌日キャッシュで支払われますが、夫婦を訳が分からない不条理な出来事が立て続けに襲います。
前半は謎がからまる不条理劇。
後半からは、どうやら終末論的な、人間を破滅させるかどうかを、老紳士の依頼主が試すため、ボタンのゲームを繰り広げているらしいことがわかります。
この手の作品、ハリウッドでは最近よく作られますね。
キアヌ・リーブス主演の「地球が静止する日」とか、「2012」とか。
破滅という観念は人を浮かれさせるようで、平安時代も末法思想が流行ったし、明治維新前夜のええじゃないか、それに滅び行く武家を描く籠城の末の落城、近くは全共闘の安田講堂立てこもりやあさま山荘事件など、枚挙に暇がありません。
自滅を美としてはならない、という言説を時折耳にしますが、逆に言えば自滅を美と見るのは人間の性で、だからこそわざわざ口に出してそれを戒めるのでしょうね。
三島由紀夫は、破滅に向かって突き進んでいく人間だけが美しい、という意のことを書いていましたね。
ご自身の美意識どおり、しなくても良い破滅を引き起こして、世界的な文学史上の事件にしてしまいました。
彼の自死は政治的なものなどではあり得ず、あくまで美を追求した文学的なそれでした。
でもこの映画、救済があるわけでも自滅があるわけでもなく、まだ依頼主の試みは続いていく、という終わり方をしていて、それは現実の社会をなぞったものなのでしょうが、エンターテイメントとしてはいかにも中途半端で、消化不良の感は否めませんでした。
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