和歌に道歌というジャンルがあります。
和歌というともののあはれや季節感、恋情などを詠う雅なものという印象がありますが、道歌は仏教の教えや道徳などを示す抹香くさいものです。
正直、私はあまり好みません。
しかし、正月、仕事始めの日くらい、そういう歌に接して心を引き締めることも必要かと思います。
怠らず 行かば 千里のはても見ん 牛の歩みの よし遅くとも 詠み人しらず
怠けずに進めば、牛のように遅い歩みでも千里までも進むことができる、という意かと思います。
日々の地道な努力を奨励する道歌ですが、いかにも無粋な歌ですねぇ。
では、こういう仕事始めの句はいかがでしょう?
天は晴れ 地は湿(うるお)ふや 鍬始(くわはじめ) 正岡子規
ここにはもののあはれは感じられませんが、たくましい農民の仕事始めの様子が大らかに、生き生きと活写されています。
説教くさい感じは微塵も感じられませんが、新年も努力しようという気分が自然に湧いてきます。
文芸に限らず、絵画でも音楽でもそうですが、主持ちの芸術はつまらないですねぇ。
道歌も仏教や道徳の普及のため、という主持ちの和歌です。
ためにする芸術のつまらなさを実感させられます。
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