今夜、いよいよ伊勢神宮の内宮で式年遷宮のクライマックスとも言うべき遷御の儀が営まれますね。
ご神体が新正殿に移る儀式です。
150人もの神職が式年遷宮のためだけの衣装に身を包み、厳かに行われます。
それにしても式年遷宮とは世界に例を見ない不思議な儀式です。
20年ごとに社殿を全て新築するのですから。
一説には、1300年ほど前から行われているとかで、古い技術の継承や、清浄を重んじる神道の精神から、天照大神を祀る伊勢神宮の社殿は常に新しいほうがよい、と言ったことが理由と考えられますが、正確にいつ、どういう理由で始まったかは謎のままです。
![]() | 伊勢神宮のこころ、式年遷宮の意味 |
小堀 邦夫 | |
淡交社 |
近年のパワー・スポットブームで、伊勢神宮にお参りする人はずいぶん増えているようです。
近代建築に大きな影響を及ぼしたブルーノ・タウトが、伊勢神宮を訪れて、「稲妻に打たれたような衝撃をうけた」と語ったのは、有名な話です。
また、ノイトラは、桂離宮をはじめとする、わが国の伝統建築に接し、「私の空間の処理と自然に対する感性と、完全に一致した。私は生涯求めてきたものに出会った。私はもはや孤独ではなかった」と、絶賛したと伝えられます。
ブルーノ・タウトは、著書のなかで、「ヨーロッパへの日本の影響は強大であった。今日の近代建築が世にでたころ、すなわち1920年前後にヨーロッパ住宅の簡素化に最も強い推進力を加えたのは、大きな窓や戸棚を持ち、まったく純粋な構成を有する、簡素にして自由を極めた日本住宅であった」と、述べています。
![]() | ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た (講談社学術文庫) |
森 とし郎,ブルーノ・タウト | |
講談社 |
20世紀初頭の欧米の建築家の多くは、日本建築の美意識を師と仰ぎ、それぞれに新しい建築を模索したのでしょうか。
日本の伝統建築の白眉が、伊勢神宮に60以上存在する社殿群であることは間違いないでしょう。
それはシンプルを究め、虚飾をこそぎ落とした機能美と、森林や石などの自然と一体となった美と言うべきでしょう。
ただ、残念ながら、伊勢神宮にお参りしても、我々下々の者はその全貌を見ることができません。
高い木の塀に蔽われて、中に入ることが許されませんから。
ハイテクの国でもあり、ヲタク文化などのポップ・カルチャーを発展させたわが国が、同時に極めて古い儀式を頑なに守り、今も次代へとつなげていこうとする姿は、外国人から見たら不思議に写るでしょうねぇ。
日本人の私でも不思議ですから。
これからも、古い伝統を守っていきたいものだと思います。
![]() | 伊勢神宮 (楽学ブックス) |
Kankan | |
ジェイティビィパブリッシング |