郵便夫にビール

文学

   今日は初夏らしい爽やかで暑い一日でした。
 昨日の雨模様と違って、私の気分も上々です。

 そういえば北原白秋が一時やたらと自由律俳句を作っていた時期がありました。

 意外ですねぇ。

 初夏だ初夏だ 郵便夫に ビールのませた

 
んだかやけくそ感が漂っていますねぇ。
 よほどビール好きだったと見えます。
 勤務時間中にビールを飲まされた郵便夫もたまったものではありません。
  今だったら懲戒の対象になること間違いなしですが、当時は大らかだったんでしょうかねぇ。

 光りかけた 時計の表 梅若葉いま

 梅若葉とは何事でしょうね。
 聞いたことがありません。
 初夏の光が窓から差し込んで掛け時計を照らしている今、梅の若葉がさかりだ、ということなのでしょうけれど、梅を持ち出して花ではなく若葉に目を付けるとは驚きです。

 後に北原白秋は自由律俳句を脱し、多くの和歌を詠むことになります。
 お気入りには、

 草若葉 色鉛筆の 赤き粉の ちるがいとしく 寝て削るなり

 ですねぇ。

 なんとなくメランコリックな感じがして良いのですよねぇ。

 上の自由律俳句と比較すれば一目瞭然ですが、短歌制作に打ち込むようになると、北原白秋はかちっとした擬古典的な作品を物すようになります。

 定型詩にしても能楽にしても武道の型にしても、型が決まっている方が、かえって自由にその世界に遊ぶことができるようです。

 よく大学の能のサークルなんかが、伝統をぶち破る、と意気ごんで新作能なんかに挑戦しますが、大抵無残に失敗するのですよねぇ。
 能は伝統芸能でありながら、笛や鼓、謡に指揮者がおらず、舞台装置も極めて簡素な、欧米の舞台芸術家が目指す前衛芸術のような側面を持っています。

 型は、長い年月をかけて先人が磨きに磨いて、これ以上磨けない、という境地を現わしているように思います。

 その伝統を超えるには、まず伝統の極北を究めなければなりません。
 ちょうど、前衛画家、ピカソが、極めて精緻で写実的な静物画や人物画を残したように。

北原白秋歌集 (岩波文庫)
高野 公彦
岩波書店

 

北原白秋詩集 (新潮文庫)
北原 白秋,神西 清
新潮社

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